今回の配達先はアフリカ大陸の東部に位置するウガンダ共和国。その首都カンパラで、中古車販売会社の駐在員として奮闘する川地茂さん(37)と、愛知県に住む母・康子さん(72)をつなぐ。2年前、ウガンダに出発する直前に、同行するはずだった妻・理恵子さん(33)の妊娠が判明。茂さんは家族を残して単身赴任することに。妻は現在、子供と共に札幌の実家で暮らしているという。
ウガンダは90年代以降、目覚ましい発展を遂げ、輸送手段が激変。街には自動車があふれかえり、その9割近くが日本の中古車だ。茂さんが働く「3WM(スリー・ダブリュー・エム)は、名古屋に本社がある中古車販売会社で、茂さんは2年前、そのウガンダ支店の立ち上げに自ら志願。たった一人で営業所をスタートさせた。今では現地社員20名を擁し、月に80台近くを販売するまでになった。
扱う中古車は、日本からケニアまで船で運ばれ、そこから雇ったドライバーたちが運転して陸路でウガンダへ。約2か月かけて輸送する。ウガンダは輸入車の関税が非常に高く、90年代初期の日本の中古車でも、現地の平均年収をはるかに超える高値となる。それでも故障が少ない日本の中古車は大人気で、東アフリカの近隣諸国からも買い付けにやってくるほど。しかしその一方で、輸送ドライバーに車を盗まれるなど、日本ではありえないトラブルも多く、責任者としてその対応にも追われる日々だ。
そんな茂さんの気がかりは日本に残してきた家族のこと。「そばで子供の成長を見られないのが一番つらい」。茂さんはいつか親子3人、ウガンダで暮らせる日を心待ちにしている。家族と離れて暮らすことになっても、茂さんがアフリカ行きにこだわったのは、7年前に青年海外協力隊で訪れたエチオピアで、現地の厳しい現状を知ったからだ。職業訓練校の教師として働いたが、訓練を受け、働く意思があっても、現地には働く場所がなかったのだ。「次はビジネスマンとしてアフリカに戻り、雇用を生み出したいと思ってきた」という茂さん。この日も支店には、雇ったドライバーたちによって次々と車が運ばれてくる。少しずつではあるが、こうして新しい雇用が生み出されているのだ。
アフリカで夢の実現に向けてがむしゃらに進む茂さん。そのエネルギーの源は、若くして夫を亡くし、女手ひとつで3人の子供を育て上げた母にあるという。「子供のために自分の人生を投げ打った母。その生き様から一番学んだのは“人生何があるかわからない。でもそれは乗り越えることができる。やらずに後悔するより、やって後悔しなさい”ということ。それが今につながっている」と茂さん。それを聞いた母は「その言葉はずっと子供たちに言い続けてきた。うれしいですね」と涙する。
そんな母からのお届け物は、間もなく1歳の誕生日を迎える茂さんの息子の成長を収めたDVD。母が札幌に出向いて撮影したものだ。すくすくと成長した息子の姿に、茂さんは「父として、息子として、大切なものを守りながら、これからもブレずに力強く前進していきたい」と語るのだった。