今回のお届け先は豊かな食文化を誇るイタリアの首都ローマ。日本に妻子を残し、イタリアンレストランを開業することを目指して、ミシュラン一つ星レストランで修業を続ける料理人の中井寛さん(29)と、宮城県・仙台に住む妻のあや乃さん(39)、母・美砂さん(55)をつなぐ。2歳の長女と5か月の長男を一人育てるあや乃さんは「離れて暮らしているので、子供も“パパ”と思っていないのでは。夫もパパになりきれてないのかもしれない」と、父と子の関係を心配する。
寛さんが働くのは、3年前にオープンして、たちまちローマのトップレストランの一つに数えられるようになった人気店。コロンビア人の料理長・ロイさんはテレビでも活躍する人気シェフだ。和食やフレンチの要素も盛り込んだクリエイティブなイタリアンは、海外からもお客が訪れるほど評判が高い。ロイさんの下、厨房で働くスタッフは9人。寛さんは、料理長、“スー・シェフ”に次ぐ3番手の“ジュニア・スー・シェフ”としてメインディッシュを任されている。
大学卒業後、中学校の教師となった寛さんだったが、大好きなイタリア料理への思いを捨てきれず、1年で教師を辞め、料理人の道を目指すことを決意した。「料理人として始めるのが遅かったので、ほかの人と同じことをしていたら埋もれて終わってしまうと思った。自分にしか見られないイタリアを見てやっていくのが、料理人として一人前になる近道だと思った」と寛さんはイタリア行を決意した理由を明かす。
結局、両親の反対を押し切り、24歳でイタリアへ。そしてローマでピアニストとして活動していたあや乃さん(39)と出会い、2011年に結婚。ほどなく妊娠が分かり、あや乃さんは仙台の実家に帰って出産することに。ところがそのさなか、東日本大震災に見舞われ、あや乃さんは大混乱の中で出産。緊急帰国した寛さんだったが、この先どうしていったらいいかわからなかったという。夢を諦めてそのまま日本で家族と暮らすことも考えたというが、あや乃さんの強い後押しもあり、断腸の思いで再びローマへと戻ることに。
現在、15万円ほどの月給は、家賃の4万円を除いてほとんど日本に仕送りをしているという寛さん。「父親として近くで子供の成長を見たいが…やはり寂しいですね」とポツリ。家族への募る思いを抑え、店を持つ日を夢見て、ひたすら料理修業に打ち込む寛さんに、あや乃さんは「今は離れていても、将来のために学べることをしっかり学んでほしいので、今は自分のことに没頭してほしい」という。
イタリアに渡って5年。日本の家族を思いながら、料理人として腕を磨き続ける寛さんに届けられたのは、日付が記された何枚ものDVD。子供たちの成長をあや乃さんが撮影し、まとめたものだ。“子供たちは私がしっかり育てるから、自分が納得するまで修業を続けてほしい”、そんな思いが込められていた。驚くほど成長した子供たちの姿に目を細めながら、寛さんは「気合が入りますね。一生頑張っていけるぐらいの気持ちにさせてもらえました!」と、新たな力を得るのだった。