今回の配達先はオーストリア・ザンクトギルゲン。全寮制のインターナショナルスクールで学びながら、F1ドライバーを目指すレーシングドライバーの笹原右京さん(17)と、群馬県に住む父・清俊さん(52)、母・晴美さん(44)をつなぐ。速く走る才能はもちろんのこと、莫大な資金力を必要とするカーレースの世界。息子のために日本で支援者探しに奔走する両親は「1年間に家が建つぐらいのお金がかかる。でも成績を残さないことには、いろんな方からのご支援はいただけない。なんとか結果を出してほしい…」と息子の活躍を願うが…。
モータースポーツ好きの両親の元に生まれ、元F1ドライバー・片山右京と同じ名前を付けられた右京さんは、幼い頃からレーシングカートでメキメキと頭角を現わし、15歳で世界チャンピオンにまで上り詰めた。オーストリアにやって来たのは1年半前。本場ヨーロッパに活動の拠点を置いてF1レーサーを目指すと共に、その“公用語”である英語を勉強するためだ。
彼が今乗っているのはフォーミュラカーというレース専用のマシン。レーシングカートを卒業した右京さんは、今年からF1ドライバーを輩出したこともある名門チームに所属し、フォーミュラカーでのレースにチャレンジしている。参戦しているシリーズは、世界18ヵ国から45名の若手ドライバーが集まり、しのぎを削るF1への登竜門。この中を勝ち抜き、さらにふるいにかけられたごく一握りのエリートドライバーだけが、F1へとたどり着けるのだ。このシリーズ参戦して4戦目。右京さんは「コミュニケーション能力は絶対に必要だと感じる。違う国の監督やエンジニア、メカニックと共同作業をするためには、自分の意見をしっかり主張していかないと、分かってもらえない」と、レーシングドライバーに必要なのは速く走ることだけでないということを、身をもって感じている様子だ。
右京さんがヨーロッパに憧れるようになったきっかけは12歳の時。ジュニアレーシングカートの日本チャンピオンになったご褒美として、ヨーロッパのレースを観戦し、そのレベルの高さに心を奪われたという。「日本では“自分は速い”という気持ちがあったので、もっとレベルの高い海外の選手と競ってみたかった。それにモータースポーツはヨーロッパが本場。そこに身を置き、文化や言葉、いろんなことを学べるのは、これからF1ドライバーになる上で絶対必要なこと。今、ここにいられることが本当に嬉しい」と右京さんはいう。
だが、F1といえば莫大な資金力を必要とする世界。今は両親が日本で支援者探しに駆け回ってくれているが、この先もレースを続けていくとなると、さらなる資金が必要となり、現状のままでは難しいという。「僕のために我が身を削ってサポートしてくれる両親は、本当に苦労している。言葉にできないぐらい感謝の気持ちでいっぱい」と右京さん。そんな両親のため、支援者のためにも、フォーミュラ1年目の“新人”という肩書きがある今年は、好成績を残して注目を集めることができる人生一度のチャンス。右京さんは「今年中に何としても表彰台に登る!」と、背水の陣でレースに臨んでいるのだ。
そんな大切なレースを控えた右京さんに、日本の両親から届けられたのは、幼い頃からいつも一緒過ごしてきた2匹の愛犬の様子を撮影した映像。彼らはレース場でも右京さんをずっと見守り続けてくれた、かけがえのない存在だという。両親からは「苦しくて辛くなったら2匹の顔を思い出して。いつも一緒にいるから。1人じゃないから。一緒に頑張りましょう!」とメッセージが…。右京さんは「感動しますね。家族のため、犬たちのため、そして皆さんのためにも、レースでいいところを見せたい」と、支えてくれているすべての人と共に走る決意をするのだった。