香港のテレビや舞台で活躍する、いま最も有名な日本人ダンサー・國澤はるなさん(32)と、京都に住む父・幹彦さん(61)、母・としみさん(57)をつなぐ。本場ニューヨークでスカウトされ、香港で一躍スターになったはるなさんに、母は「弱音を吐いたりしない娘なので、私には言わないけど、人間関係で辛い思いをたくさんしていると思う」といい、父は「日本に帰ってくる気はあるのか。結婚はどうするのか…」と心配している。
香港最大のダンススクールの講師でもあるはるなさん。得意とするのは「ジャズファンク」と呼ばれるダンスで、現在週に12クラスを担当している。本場NY仕込みのオリジナリティあふれる彼女のレッスンは常に超満員の人気で、今やダンスだけでなく、彼女のファッションやライフスタイルまで真似されるほどのカリスマ的存在だ。
教師の父と看護師の母の元に生まれたはるなさんは、8歳からクラシックバレエを始め、周囲からもプロのバレエダンサーとして活躍することを期待されていた。しかし17歳の時に足のケガで断念。夢を断たれて自暴自棄になったはるなさんに、母が勧めたのが海外留学だった。イギリスやアメリカに語学留学し、海外生活の楽しさに目覚めたはるなさんは、大学を中退してニューヨークへ。そこでジャズダンスと出会い、自由に自分を表現するスタイルにたちまち魅了された。「踊って生き生きしている自分を取り戻した」とはるなさんは振り返る。
NYで4年間ダンス修業を積み、プロとしての活動をスタートさせたはるなさん。そんな彼女が、香港一といわれる振付師ハイ・キング氏にスカウトされて香港へ渡り、またたく間に売れっ子ダンサーに。モデルとして起用されることも多く、今やはるなさんは香港エンターテインメント界になくてはならない存在なのだ。
だが、その人気の影では嫉妬の的になったり、誹謗中傷を受けることも多く、傷つくことは多いという。「“日本人だから”と特別扱いされている部分もある。香港で頑張ってきたダンサーにしたら、“突然香港にやって来て、いきなり主役を取って…”と面白くない気持ちはあると思う」。辛いときは1人で泣くこともあるが、両親に弱音を吐くことは決してないという。
現在、はるなさんには同じダンススクールで講師を務める人気ヒップホップダンサーの恋人がいる。はるなさんは結婚について「今すぐ結婚・妊娠となったら、ここまで築き上げてきたものを諦めなければならない気がする。まだまだ先です」と話す。30歳を過ぎ、ダンサーとして決して若くはない年齢になったはるなさんだが、最近心境にある変化が生まれたという。「将来的には自分のやって来たことを伝えたいというのはある。まずは香港に自分のスタジオを持ちたい。日本に住むことはないと思う」とはるなさんはきっぱり。
日本を離れて13年。さまざまな困難に直面しながらも、1人で道を切り開いてきたはるなさんへ、両親からのお届け物は、はるなさんの成長日記。忙しかった両親が、はるなさんが小学1年生になるまで毎日記録し続けたものだ。そこに記されたたくさんの思い出に、はるなさんは「愛を感じますね」と涙ぐむ。最後のページには「人間関係で疲れたとき、開いてみてください。ほっこりするはずです」と、母のメッセージが添えられていた。はるなさんは「両親に辛いことは話してなかったのに…気づかれていたんですね」と、母の想いに涙するのだった。