今回の配達先はカナダ。保育士の資格取得を目指してバンクーバーの学校で学ぶ牧野光沙さん(23)と、大阪に住む父・兆秀さん(55)、母・友子さん(55)をつなぐ。元々1年の約束で留学した光沙さん。英語がまったく喋れない中での留学だったが、両親からの援助は受けずにここまでやってきた。両親は「学校ではちゃんとやっているのか」「毎日ちゃんと食べているのか?」と案じている。さらに父は「向こうで彼氏が出来たらしいが…どんな男なのか。早く帰ってきて日本で働いて欲しい」と、心配は尽きない。
光沙さんが通っている学校は日本でいうところの専門学校で、専攻しているのは、1年間のカリキュラムでカナダ国内での保育士の資格を取れるコース。実は日本ではネイリストとして働いていた光沙さん。カナダにやってきたのは1年間のワーキングホリデーでネイリストとして働くためだった。海外で一度働いてみたいという軽い気持ちだったという。
留学当初は英語がまったく喋れなかったが、語学学校に通いながらネイリストとして働くうち、英語力はどんどん向上。そのことが大きな自信につながったという。1年間のワーキングホリデーが終わる頃には「このまま帰りたくない」「何かを得て帰りたい」という意欲が湧き、さらに学生として1年間カナダに残ることを決意。元々子供と触れ合うのが好きだった光沙さんは、保育士を目指すことに。
だが、資格を取るためには専門的な知識が求められるだけに、今は勉強漬けの日々だ。高校時代は、なぜ勉強しないといけないのか疑問を抱き、次第に授業についていけなくなった。結局高校を1年で中退し、アルバイト生活を続ける10代を過ごしたという。そんな光沙さんがカナダに来て1年半、今、改めて学ぶことの喜びを感じているという。「日本にいた頃は目標もなく将来のことも考えていなかった。こっちに来てやりたいことが増えた。この学校を卒業すると1年間保育園で働ける資格が取れ、さらに働き先のサポートがあり、ビザが取れれば5年間延長できる」。光沙さんは新たな目標を見出したのだ。
これまでは学生ビザしかなく、貯金を切り崩して生活してきたが、ようやく仕事ができるビザも取れ、仕事探しに奔走。求人サイトで探したネイルサロンに片っ端から飛び込み、見事に仕事を勝ち取った。元々控え目な性格だったという光沙さん。「日本にいたらこんなことはできなかった。こっちに来て自分自身が変わった」という。
そんな光沙さんにはある悩みがある。それは同居している彼氏で、ブラジルからの留学生・ガブリエル君(19)のこと。同居しているのは元々ガブリエル君が住んでいた部屋で、その部屋の家賃と生活費のすべてをブラジルの両親に援助してもらっているという。ところが彼は学生ビザ申請の不備から、現在学校に通うこともできず、ずっと家にいるのだ。しかも家のことはほとんど何も手伝わず、光沙さんの手をわずらわせてばかり。「子供を育てているみたい」と光沙さんはあきらめ顔だ。
そんな光沙さんへ両親から届けられたのは、家族のメッセージが綴られたタペストリー。“心配ばかりかける娘だけど、やはり応援したい”…そんな思いがあふれていた。母からは「夢、希望をいつまでも」、父からは「早く帰って来い」との言葉も。「こういうのを見ると、帰りたくなりますよねぇ」としみじみ語る光沙さん。「最初は1年…と約束していたのに、伸ばし伸ばしにして、両親をがっかりさせている気がする。でも日本に帰っても、また私は違う国に行くと思う。私は大丈夫なので心配しないで。体だけには気をつけてほしい」と、心配する両親を気遣うのだった。