今回の配達先はベースボールの本場アメリカ・テキサス。アメリカ独立リーグ“グランドプレーリー・エアーホッグス”の内野手として活躍する西本泰承さん(26)と、妻・成美さん(23)、姉・麻由さん(31)をつなぐ。メジャーリーグを目指してこの春アメリカに渡った泰承さん。渡米が決まってから妻の妊娠が判明した。妻は「11月には生まれるので、これからのことを決めていかないと…。生活が安定すればいいのですが」と不安を口にし、姉は「家族一緒に暮らすほうが父親の実感が湧くと思う」と弟夫婦の現状を心配する。
泰承さんが所属する独立リーグはアメリカ・カナダから13チームが参加し、地元スポンサーなどからの資金提供により運営している。そのレベルは高く、エアーホッグスにも多くの元メジャーリーガーが所属し、再びメジャーへの昇格を狙っている。独立リーグは実力主義の世界で、泰承さんがチームでプレーするようになってすでに10人以上が入れ替わったという。スカウトマンの目に留まれば明日にでもメジャーリーグに入団できる可能性がある一方、結果を出さなければ一試合で解雇されることも。そんな中で泰承さんは開幕からレギュラーとして全試合に出場している。毎日が生き残りをかけたシビアな闘いで、泰承さんは「気がまったく抜けない。日本とはぜんぜん違う」という。
泰承さんは野球の名門・宮崎の日南学園で2度、甲子園に出場。大学卒業後は四国独立リーグのチームで活躍し、トップクラスの選手としてプロ野球入りは確実と言われた。しかし在籍の3年間、ドラフトで泰承さんの名前が挙がることはなかった。「もう野球のことは考えたくないぐらい落ち込んだ。それでもここまでやってこられたのは、当時付き合っていた妻が支えてくれたから。そのおかげで今ここにいる。妻には感謝している」と泰承さん。一歩踏み出す勇気をもらい、26歳という年齢を考え、これが最後の挑戦という覚悟でアメリカへ。昨年テスト試合に参加し、見事エアーホッグスからスカウトされたのだ。
現在はチームメイト4人と共同生活し、収入は月に800ドル。家賃など生活に必要なものは球団が提供してくれ、日本に仕送りまではできないものの、生活に問題はないという。そんな泰承さんがテキサスでもっとも刺激を受けた場所が、ダルビッシュ投手が所属する“テキサスレンジャーズ”のスタジアムだという。「一度彼の試合を見に行ったんですが…彼は同じ日本人で同級生。スゴイな、と思う部分と、もし今自分がここに立ったら、しっかり自分のプレーができるのだろうかと思う部分、いろいろ考えさせられました。最終的にはこういうところでプレーができるチームに行きたい」と泰承さんは夢を語る。
メジャーリーガーという目標に向け、厳しい世界で戦い続ける泰承さん。「体力が続く限り現役でやりたい気持ちはある。でもずっと続けていいのか。11月には子供が生まれる。野球をやって家族を養っていけるのか不安もある」。夢と現実の狭間で、泰承さんの気持ちは揺れ動く。そんな泰承さんに妻から届けられたのは、お腹の赤ちゃんのエコー写真をアルバムにまとめた“成長記録”。日々大きく成長していくわが子の姿に「すごいですね…」と涙する泰承さん。添えられたメッセージには「赤ちゃんも頑張って元気に育っているからパパもビッグになってね」と綴られていた。泰承さんは「頑張らないとダメですね。成し遂げないといけないと思う」と自分に言い聞かせるようにつぶやくのだった。