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#2047月29日(日)10:25~放送
台湾

 台湾の茶農家でお茶作りの修業をしている渡辺拓哉さん(34)と、静岡県に住む父・栄さん(62)、母・真理子さん(62)、そして昨年結婚したばかりの妻・恵美さん(32)をつなぐ。世界でも最高級といわれるウーロン茶「東方美人」の魅力に取りつかれ、日本に新妻を残して無給で修業に励む拓哉さん。父は「お茶で生計を立てられるまでになるのか不安」というが、拓哉さんは「中途半端な気持ちで来ているわけじゃない」と、その意志は固い。

 世界的なお茶の産地・台湾。拓哉さんが修業をしている茶畑は台北の隣、桃園県にある。今はちょうど「東方美人」の収穫時期。ウンカという虫の分泌物と茶葉が反応を起こして独特の香りを生む東方美人は、普通のウーロン茶の10倍の値段が付くこともある稀少なお茶だ。ウンカを殺さないよう無農薬で育てられるため、雑草取りを始め膨大な労力がかかるという。

 拓哉さんが住み込みで修業をする農家の製茶工場は、桃園県一の規模を誇る。営むのは拓哉さんの師匠でもある林文経さん(78)。数々の賞を受賞したお茶作りの名人だ。倉庫を改造した拓哉さんの部屋は簡素なもので、冷暖房もない。現在は修業の身なので給料はもらっていないという。「日本で1~2年かかることを、ここでは1ヵ月で覚えられる。給料なんて言える立場じゃない」と拓哉さんは言う。

 お茶どころ・静岡県出身で、小さい頃からお茶が大好きだった拓哉さん。大学卒業後は一旦IT関係の会社に就職したものの「お茶に関わる仕事がしたい」と思い立って退職。拓哉さんが求めていたのは、職人が丁寧に作る小ロット(製品単位)のお茶だが、日本では目指すお茶農家に巡り会えなかった。そんな時に知ったのが、お茶の神様といわれる林文経さん。この人のお茶作りを学びたいと、なんのツテもないまま台湾へ飛び、初対面で弟子入りを願い出た。それからお茶の収穫期だけ台湾に通う生活を4年間続けたが、中途半端だと感じ、住み込みでの本格的な修業を決意した。

 いよいよ東方美人の収穫日。収穫した新芽は天日干しされ、人の手や機械で撹拌し、茶葉に小さなキズをつけて発酵を進めていく。発酵は気温や湿度で進み具合が変わる。わずかなタイミングのズレが味を左右するため、茶葉から目が離せず、収穫が続くこの時期はほとんど寝る時間もないという。収穫からおよそ30時間。ようやく東方美人が完成した。出来たばかりの茶葉で淹れたお茶を口に含んだ拓哉さんは「甘味も香りもすごく出ている。いいロットだと思う」と大満足の笑顔を見せた。

 拓哉さんが茶作りに奮闘する姿に、父は「想像以上に過酷だ」と心配するが、母は「あんないい笑顔は見たことがない。自分が納得できる仕事になれば…」と、少し安心したようだ。妻の恵美さんも「急かさず、見守っているしかない」という。そんな両親からのお届け物は、地元・静岡の新茶と富士のわき水、そして30年前から実家でお茶を入れるときに使われてきた南部鉄瓶。“忙しいだろうが、たまには懐かしい静岡のお茶で一息ついて欲しい”という両親の思いが込められていた。だが拓哉さんは「父が大事にしていた鉄瓶。ちゃんとお茶で生活できるようになるまでは使えない…」という。その言葉に父は「お茶に賭けている気持ちが伝わってきた」と、拓哉さんを頼もしく思うのだった。