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#1986月10日(日)10:25~放送
アメリカ/テキサス州エルパソ

 今回のお届け先はアメリカ・テキサス州エルパソ。この町でズンバインストラクターとして奮闘するドミンゲス一美さん(27)と、故郷の沖縄・那覇市に住む母・けい子さん(55)、妹の広美さん(23)をつなぐ。ズンバはコロンビア生まれのフィットネスプログラムで、ラテン音楽の陽気なリズムに乗って踊るエクササイズ。知らず知らずのうちに大量のカロリーを消費できるため今、全米で大人気だという。母と妹は「クラスをたくさん持って忙しく働いていると聞いている。体が心配です」と話す。

 沖縄で父方の祖父母や叔父らと同居する大家族で育った一美さん。寡黙で逞しい海の男だった父は一美さんの自慢だったという。だがその父は一美さんが10歳のときに他界。その悲しみを乗り越え、家族からたくさんの愛情を受けて育った一美さんは、17歳の時に海兵隊員として沖縄に赴任していた現在の夫・デイビットさんと恋に落ち、19歳で結婚。夫の転勤と共にアメリカへ渡った。

 それから7年。今では連邦保安官として働く夫を支え、6歳になる息子の子育てをしながら、インストラクターとして多忙な日々を送る一美さん。仕事の中心は町のYMCAでの指導で、朝は8時からレッスンが始まる。参加者は若者から80代のお年寄りまでさまざまだ。さらにズンバだけでなく、近隣の小学校の校長からその指導ぶりを買われて、今年から体育教師として体育の授業も教えるようになった。いつもパワー全開でエネルギッシュな一美さんの指導は、エルパソの町の人たちをすっかり魅了しているようだ。

 「まさか自分が教えることになるとは思ってもいなかった」という一美さん。元々ダンスは大好きだったが、アメリカでズンバのレッスンを受けたのがきっかけでその虜となり、ついにはインストラクターの資格を取得。今は週に14ものクラスを抱える人気インストラクターになった。1時間に1000キロカロリーも消費するという激しいズンバを毎回全力で踊り、指導する一美さん。膝には水が溜まり、体は悲鳴を上げているが「力は抜けない。皆さんが楽しんで踊ってくれるのが嬉しい。私の天職です」と天真爛漫に笑う。

 そんな一美さんが生徒たちと共に、町の小児病院への寄付金を集めるためのチャリティー・ズンバパーティーを企画した。「昨年、東日本大震災に見舞われた日本への募金を募るチャリティーをしたんです。その時、エルパソの方々にとても助けていただいたので、今度は恩返しです」と一美さん。当日は子供からお年寄りまでおよそ200人もの人たちが集まってくれ、イベントは大盛況となった。エルパソでインストラクターを始めて1年半。「エルパソの人たちは私のことをまるで家族のように可愛がってくれます。ここで出会った人たちが私の家族です。いつも助けてくれて、とてもありがたい」。一美さんはこの町の人々に特別な絆を感じているようだ。

 ある休日。一美さんは息子を連れ、花束を抱えて郊外の山にやってきた。この日は大好きだった父の命日。毎年この日に大自然の中で亡き父に手を合わせるのだという。「命日はこうして父に会いに来るんです。海が大好きで、もの静かな日本男児だった。夫もとても父に似ているんです」と一美さん。そんな父の命日に沖縄の母から届けられたのは、父が生前に愛用していた大理石の灰皿。一美さんは「お母さん、持ってたんだ。ありがたい…」と感激する。添えられた手紙には「お父さんはいつも見守ってくれていると思うので、命日には家族みんなでお祈りしてください。そして仲良く素敵な家庭を築いてください」と綴られていた。「ここまで育ててもらって感謝でいっぱいです。今でも父が心の支えになってくれている。だから頑張れる」。そういって一美さんは涙をこぼすのだった。