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#1945月13日(日)10:25~放送
オーストラリア/メルボルン

 今回の配達先はオーストラリア・メルボルン。ケーキ職人として奮闘するマッキーノン直美さん(40)と、京都で洋食屋を営む父・紀久男さん(70)、母・和子さん(69)をつなぐ。15年前、父の反対を押し切って日本を飛び出した直美さん。父は「おっとりして、リンゴの皮もむけないような娘だったが、ある朝、置き手紙をして出て行った。そんな事をするような娘じゃなかったのに…」と、振り返る。

 今、オーストラリアではカップケーキが大人気。直美さんが働く「ジョイ・カップケークス」はオープンからわずか2年で3店舗に増えたメルボルンで一番という人気店だ。美味しいだけでなく、添加物を一切使わない天然素材にこだわったケーキが自慢で、直美さんはその商品開発から製作までを1人で一手に引き受けている。

 日本のレストランで製菓技術を身につけた直美さんは、結婚を機にメルボルンに移住。ホテルでケーキ職人として働いていたが、その腕を買われてこの店の立ち上げを任された。今は3つの店で1日に売り上げるおよそ3000個もの仕込みを毎日1人で行っている。店で出すカップケーキは30種類ほど。そのレシピを知っているのはオーナーと、レシピを作った直美さんの2人だけだという。直美さんは毎朝5時に出勤し、前日仕込んだ生地を1人で焼き、それが終わるとまた翌日分の3000個の仕込みをする。直美さんが1日でも休むと店を開けられないため、休日もない。「レシピを教えると広まるので、オーナーは他の人に作らせたがらないんです。生まれ変わったらもっとゆっくりした人生を送りたいけど、自分に合った仕事を見つけられたことは幸せ」と直美さんはいう。

 直美さんは画商を営むご主人のマークさん(53)と一人娘エリちゃん(10)の3人暮らし。大学卒業後に訪れたメルボルンでマークさんと出会って交際をスタートさせ、帰国後、2人で暮らすためメルボルンへ渡る決意をした。だが父は大反対。直美さんは「自分の道は自分で決めたいと思い、置き手紙をして飛び出した」と当時の想いを語る。その後、直美さんは自分が信じるままにマークさんと結婚。幸せな家庭を築き上げてきた。

 今は仕事が多忙な中でも、時間を作って家族でバーベキューをしたり、団らんの時間を大切にしているという直美さん。それは幼い頃の記憶が関係しているという。有名ホテルでシェフとして働いたあと独立した父は土日も仕事で忙しく、あまり遊びに連れて行ってもらえなかった直美さんは、「娘にそういう寂しい思いをさせたくない」という。その一方で、父と同じ料理の道に進んだのも、ひたむきに料理に打ち込む父の姿をずっと見ていたからなのだ。

 商品開発をすべて任されている直美さんは、仕込みの合間を縫って、糖尿病やアレルギーを持つ人も安心して食べられるケーキなど、常に新作のアイデアを練り、試行錯誤を繰り返している。そんな直美さんに父から届けられたのは古びた1冊のノート。50年前、まだ駆け出しの料理人だった父が日々厨房で学んだことを懸命に書き留めたものだ。その裏表紙には“食べるものを作る職業はとても貴い。無理せず焦らず流されず、健康に気をつけて家族と共に歩んでください”と父の言葉が綴られていた。真摯に料理に向き合う情熱に溢れたノートを眺めながら、直美さんは「すごい…一生の宝物です」と、しみじみと語るのだった。