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#1832月12日(日)10:25~放送
中華人民共和国/香港

 今回のお届け先は、中華人民共和国・香港。この地で起業し活躍する空間・照明デザイナーの盛世匡さん(44)と、大阪に住む父・真一郎さん(70)、母・三和子さん(69)をつなぐ。18歳で親元を飛び出した長男の世匡さんに、建築業を営んできた父は「跡を継いでくれると思っていたので大反対でした」と振り返る。

 世匡さんは5年前に香港で起業。現在スタッフ6名を抱えるデザイナー兼経営者だ。空間・照明デザイナーとは、インテリアデザインと照明を巧みに扱って店舗などの空間を演出する仕事。世匡さんは店舗だけでなく、これまで香港ディズニーランドや上海万博などの大プロジェクトも手がけるなど、活躍の場は中国全土に及ぶ。昨年にはその功績が認められて、香港デザイン界最高峰の賞も受賞した。

 両親の反対を押し切って東京の美大に進学した世匡さんは卒業後、東京の家電メーカーに就職。だがビジネス優先の商業的なデザインに嫌気がさし、安定した生活を捨てて30歳のときイギリスへ留学した。そして11年前、友人に誘われて香港へ。現地のデザイン会社に勤めたのちに独立した。

 今回、世界的スポーツブランドの店舗がリニューアルされることになり、その受注を巡って世匡さんの会社とライバル会社の2社でコンペが行われることになった。ところがコンペ当日、世匡さんと共にプロジェクトを進めていた2人のうち1人が体調不良で欠勤。さらに急遽、クライアントから店舗の立体モデルを用意するように命じられた。コンペまで3時間しかなく、世匡さんらは2人で3人分の作業を分担。それでも間に合わず、共に働く身重の奥さんも駆り出し、作業を進めることに。こうした急な発注は香港ではよくあるそうだが、限られた条件の中で100%の力が発揮できないことに、苛立ちを覚えることも多いという。

 苦労の末、なんとかコンペに間に合わせ、仕事を勝ち取ることができた世匡さん。競争が激しい中国で起業し、従業員を抱えて責任ある立場になった今、経営者として先輩である父のことをよく思い出すという。「高校生の頃は親父の苦労も知らず、建物の美観だけにこだわり親父の仕事を批判したりもした。今思うと未熟だった。今は“親父はすごい”と思う。親父に認めてもらえる息子になりたい」と世匡さんはいう。そんな世匡さんの言葉に、父は「私も昔は若かったから“子供が何を言っている”と怒鳴りつけたものだが…今回初めてそういう思いを知って、涙が出そうになった」と感激する。

 そして今回父から届けられたのは、世匡さんが18歳で親元を飛び出したとき、両親に送った大阪中之島公会堂の絵。世匡さんが“離れて暮らしても心は大阪にある”という想いで描いたものだ。そこには「もう私達の事は気にせず、香港で頑張ってほしい」という父の想いが込められていた。世匡さんは「あの時の気持ちを喚起させられますね。今まで自分一人で頑張ってきたという想いがありましたが、みんなの思いがあってここまで来られた」と、見守ってくれた両親に感謝。そして「唯一できていないのが親孝行。後悔しないようにやりきりたい」としみじみ語るのだった。