過去の放送

#1659月18日(日)10:25~放送
「アメリカ/カリフォルニア」

 今回の配達先はアメリカ・カリフォルニア。ここでフリースタイルモトクロスライダーとして活躍する東野貴行さん(26)と、大阪・堺市に住む父・正さん(58)、母・美子さん(59)をつなぐ。

 フリースタイルモトクロスは、ジャンプをして空中でさまざまな技を繰り出し、その難易度や華麗さを競う競技だが、一歩間違えば死ぬこともある命がけのスポーツだ。7歳のときに、父と共にモトクロスバイクを始めた貴行さん。父は「アマチュアでやってほしかったので、プロになることには反対だった。息子とはよくバイクのことで喧嘩をしたが、バイクでまたすぐに仲良くなった。親というより友達感覚でした」と振り返る。一方、母は「怪我が心配ですが、祈るしかありません」と、遠くから息子を見守っている。

 幼い頃ころからバイクの才能を発揮した貴行さんは、中学3年で多くのモトクロス大会に出場。18歳でプロとなったが、5年前には日本でのプロ契約を全て断わり、単身、本場アメリカへ乗り込んだ。以来、さまざまな大会で優勝を重ね、ようやく全米で顔が知られるまでになった。現在は15社のスポンサーがつき、契約料だけでも収入はサラリーマンの平均年収を上回るという。

 貴行さんは2日後に「X GAMES」という大会を控えていた。自転車やスケートボード、バイクなどのアクションスポーツが集い、過激な離れ業を競う世界最高峰の大会だ。貴行さんが出場するフリースタイルモトクロスの「ベストトリック部門」は、世界中から選ばれた8人のプロが競い合う。昨年、貴行さんは世界で3人しかできない技で銅メダルを勝ち取り、今年の出場権を獲得した。今回挑戦するのは、成功すれば世界初という技で、この1ヶ月、猛特訓を繰り返してきた。狙うのはもちろん金メダル。大会で金メダルを獲得すれば知名度も上がり、報酬は何倍にも跳ね上がるという。

 そんな貴行さんの右腕には、あるライダーの名前が刻まれている。アメリカに渡った無名のときから、一緒に戦ってきたライバルであり友人だったが、金メダルを獲得した年に、技に失敗して亡くなった。「それまでは、どれだけ危なくても死ぬことはないと思っていたけど、もう死ぬレベルにまでなったんやなと…。やはりちょっとコワいですね」。試合を前に、貴行さんはそう語った。

 そして大会当日。転倒する選手も多い中、貴行さんは世界初の技を見事に成功させ、会場に集まった観客を大いに沸かせた。だが得点のほうは思いのほか伸びず、4位という結果に終わり、「一応満足だが…でも完全な満足ではない。悔しい」と複雑な気持ちをのぞかせた。

 そんな貴行さんに父から届けられたのは、チェーンカッター。親子でバイクを始めた頃から、父がずっと貴行さんのバイクを整備してきた工具だ。「遠く離れた今も、あの頃のようにずっと応援している」。そんな父の想いが込められていた。貴行さんは「これが僕の4位のメダルですね」と笑い、「僕に生きる希望を与えてくれてありがとうございました。父にもまたバイクに乗ってほしい。あの気持ちよさそうな笑顔を見たいです」と、父への想いを語る。