この時期のハワイは気温25度前後、湿気もありません。最高の気候の中、Y・E・ヤン、キム・ヒョンソン、ドンファン、ノ・スンヨルの気心がしれたメンバーで下見ラウンドが始まりました。
練習ラウンドにおけるPGAツアーと日本ツアーの大きな違いは、PGAツアーでは練習ラウンドからギャラリーにコースを無料解放していることです。
練習とは言え、良いショットにはギャラリーから惜しみない拍手が起こり、試合本番さながらの雰囲気。当然、選手の士気も高まります。こういった環境も選手の技量の向上に少なからず繋がっているのだろうなと感じました。
さてこの4人での練習ラウンド、PGAツアーの実績だけで見ると、ツアーデビュー戦というヒョンソンが一番格下の選手となるのでしょうが、ショットの安定感はひいき目ではなくヒョンソンが群を抜いていました。ヒョンソンのショットを見ていると、09年の全米プロゴルフ選手権でタイガー・ウッズをプレーオフで破り、アジア勢としては唯一のメジャー覇者となった、Y・E・ヤンのショットにも負けていません。それが試合での結果に繋がるかと言えばまた別の話なのですが。
Y・Eヤンのプレーを見ていると派手さはないのですが、ボールを自分のイメージ通り自由自在に操っています。中でもショートゲームの上手さはさすが世界のトップ選手です。後輩達の面倒見も良く、とてもメジャーチャンピオンとは思えない優しさと謙虚な人柄で一気にファンになりました。私が片言の韓国語と英語のミックスで話しかけると、とても流暢な日本語で返されました。
同級生の石川遼や松山英樹よりも一足早く世界の舞台で戦っている、このブログでもお馴染みのノ・スンヨルは、タイガー・ウッズを復活させたコーチのショーン・フォーリーに師事し、スイングの改造途中で、常にチェックポイントを気にしながらプレーしていました。ウッズとも一緒に練習をしているそうです。まだ途中と言うことで、理想通りにはボールをコントロール出来ていない様に感じました。それでも、スイングのキレの良さは抜群です。10代の頃の荒々しさは無くなりましたが(私はこの荒々しさも好きでした。)、ヘッドスピードの速さは健在でした。
ドンファンに関しては、体付きが一回り大きくなっていることに驚きました。「PGAツアーはどう?楽しいでしょ?」と聞くと、「いやぁ、楽しいことはありません。凄く疲れます。」と険しい表情に。憧れのPGAツアーにファイナルQTトップ通過で乗り込み、さぞかし充実した日々を過ごしているだろうと思っていた私には意外な答えでした。
「日本では僕の飛距離は50位くらいでしたけど、アメリカでは100位以下です・・・。僕より飛ばす100人以上の選手と勝負しないといけません。それとアメリカでは1打落とすだけで順位が20位下がります。それだけ選手層が厚いんです。優勝争いの人数も日本とは比べ物にならないぐらい多くて、上位に入ることは出来ても、アメリカで優勝するのは本当に大変なことだと思います。」とPGAツアーで1年間戦って味わった試練をしみじみと語ってくれました。
「でも、優勝のチャンスはあると思います!!」と闘志を燃やしているのも事実です。
顔見知りのPGA選手達に「僕の日本ツアー初優勝の時にテレビで実況をしてくれた日本のアナウンサーです。今回はキャディで来ているんですよ。」と私をアピールしてくれました。世界の舞台で戦うドンファンの“初優勝の実況アナウンサー”として、私も光栄です。
皆それぞれのチェック方法で今年のワイアラエの攻略法を確認していました。
ヒョンソン以外はこのコースでの試合を経験しているので、グリーン上では4日間のピンポジションを想定しながらパッテイングラインのチェックをくまなく行っていきます。ヒョンソンもそれを参考にしながら、バーディチャンス・エリアを確認し、そこからのラインやボールの転がり方を入念にチェック。
「距離のジャッジは先輩に任せます。それと、バーディエリアを一緒に確認して下さい。」とプロキャディに注文する様なリクエストが来ました。重要な部分を任され、私のやる気は急上昇!!この難しいリクエストに対しても不安は一切感じませんでした。
ラウンド後は、打撃練習場で2週間半のブランクを取り戻すべく精力的に打ち込み、入念なパター練習を。充実した練習ラウンドはあっという間に過ぎていきました。
さていよいよ大会開幕です!! <4>につづく・・・