「またキャディやりました 2」
2日目以降は曇りや雨などで涼しくなり、体は随分と楽になりました。
雨天時は雨具を用意しなければならないのでキャディバッグの重量は更に重くなりますが、初日の暑さを思えば何と言うことはありません。
2日目からは初日に出来なかった残り距離の歩測を自主的に始める余裕も生まれ、ヤーデージブック(グリーンまでの残り距離を詳細に記したメモ)を参考にしながら、残り距離とヒョンソンが使用したクラブ、打ち方などを詳しく記して行くようにしました。
これが翌日に繋がります。
前日に書いたメモを見ながら「昨日のここでは6番アイアンでぴったりだったな。今日は向かい風が強いから一つ番手を上げて5番アイアンが良いだろう。」と計算して、「ヒョンソン、オヌル、パラミ、マニアゲインスト。ファイブアイアンOK!(今日は風がとてもアゲインストだから5アイアンでいいよ!)」
この結果が良い方に出ると、キャディとしての自信が芽生えてきます。
アナウンサーとしての仕事もそうですが、自信が生まれると言葉にも自信が備わります。選手が打つショットにも大きな声で「チョアヨ!(いいよ!)」などタイミング良く反応できるようになっていきます。
最終日、3メートルのバーディーパット。ヒョンソンが「少しスライスですか?」と聞いてきたので、私はラインを読みながら「アニョ。チョッグム フック。(違うよ。少しフックだよ!)」と自信をもって答えました。
私が自信を持って答えても、選手が信頼してくれなかったり、悪い結果が出たりすれば意味がありません。内心ドキドキしながらそのパットを見守っていましたが、ヒョンソンは私を信じて言った通りに打ってくれ、カップのど真ん中からバーディーパットが決まりました。
ヒョンソンに「オジャワさん、ラインパーフェクトです。カムサムニダ。」と言われた時は本当に嬉しかったです。
ただし今のところ私は自分を、選手の気持ちを盛り上げ、励まし、勇気付ける“リアクションキャディ”だと思っています。選手のリクエストに満点回答を出すことはまだまだ出来ません。
こんな話しをしていると、「アナウンサーが一体何を目指してるの!?」と突っ込まれます。丸山茂樹プロにも冗談めかしてそう言われました。
今回4日間通してキャディをやったことで、選手の技術や手法、心理などは勿論ですが、キャディが選手にとっていかに大きな存在で、その信頼関係がいかに大切なのかがより深く分かりました。
ヒョンソンは今大会、初日を終えた時点で予選通過も危ぶまれる位置でしたが、二日目を何とか堪えて決勝ラウンドに進み、最終的に49位タイで終わりました。
優勝したのは韓国の23歳、チョ・ミンギュ。最後はぶっちぎりの優勝でした。
同胞の後輩の初優勝を祝って、自分のことのように喜びながらミンギュに祝福の水を掛けるヒョンソンを見ていると、「近い将来、ヒョンソンにもああやって水を掛けて祝福したいな。」という思いに駆られました。
また大きな財産と一つの夢が増えました。
このような素晴らしい機会を、再度与えてくれたヒョンソンに感謝です。