“THE OPEN”観戦記6(完)
今回は世界のトッププロ達をなるべく沢山見たかったので、定点観戦もしました。
色々な選手を見ると、選手それぞれに攻略方法も違います。
例えば16番163ヤードのパー3のティーショット。左からの強いアゲンストでピンはグリーン右サイド。狙い方は千差万別です。
高めの球で、左からの風に乗せる選手。
低めの球で、ピン方向に大胆に狙う選手。
その中間の高さで、グリーンセンターを狙う選手。
狙い方は多種多様でありながらも一つだけ共通していたのは、ピンの右に外す選手がほとんどいなかったことです。
強風吹き抜ける状況下で、「バーディーチャンスを伺いながらも間違ってもボギーを打たない」積極的な気持ちの裏にしっかりとしたリスクマネジメントが施されています。
あれだけの悪天候の中で、技術の素晴らしさはさることながら、決して攻めの気持ちだけに流されずに堪える「メンタル面の強さ」も感じました。立っているだけでも苦行のような天候なんですから。
もう一つの発見は、ドライバーでのティーショット。その弾道に関してです。
アゲンストの風に向かっても弾道を低く抑えることはせず、驚くほど高めのボールを打っていました。
通常アゲンストの風にショットを放つと、ボールは吹き上げられるように急速に高く舞い上がって失速します。しかし世界のトッププロは、高弾道に打ち出しながら吹き上がらないボールを打っていました。
スイングを変えて低弾道のボールを打つのではなく、スイングを変えずに低スピンのボールを打てるのです。要はアゲンストに負けない高いボールです。
風向きによってスイングを変えることをしないので、あの強風の中でもいつもと同じリズムでスイングしているように映ります。
ただし、誰しもこのスピン量の少ないボールを打てるわけではありません。これは全てのプロにとって永遠のテーマで、それが打てる選手だからこそ、“THE OPEN”という世界のメジャーの舞台で戦える力を持つ、プロ中プロなのでしょうね。
今大会優勝候補だった世界ランキング1位※のルーク・ドナルドや同じく2位※のリー・ウエストウッドが予選落ちしたことからも、この大会の攻略が容易ではないこと、またその中で決勝ラウンドに進み、戦い抜いた選手達の素晴らしさが浮き彫りになります。
今大会、タイガー・ウッズの欠場や、石川遼、藤田寛之ら日本人選手達の活躍が見られなかったのは残念でしたが、新旧“トム”の活躍や、優勝したダレン・クラークやフィル・ミケルソンらベテラン勢の奮闘など素晴らしい大会でした。
予選落ちした日本人プロ達は一様に「世界との壁を感じた」と言いますが、この悔しさを忘れずに次へのステップにしてくれると思います。
今回初めて“THE OPEN“を観戦して、この悪天候の下、自然のままのコースに果敢に、むしろ楽しそうに立ち向かう選手達の姿を見て、「これがゴルフの原点なのだな」と感動し、改めて”THE OPEN“とは真の実力が試される大会なのだと実感しました。
私も“THE OPEN”で見たこと感じたことを、来年からの『ミズノオープン~全英への道~』の実況に活かして行きたいと思います!!
※世界ランキングは全て7/31付けのランキングです。