「石川遼VS薗田峻輔から感じたこと」
昨年の賞金王・石川遼がジュニアゴルファー時代に憧れ続け、
その背中を追いかけた選手が杉並学院高校の先輩である薗田峻輔
だということは、あまりにも有名な話。
しかし、プロの世界で先を行ったのは石川遼の方でした。
15歳でプロツアー優勝を果たしてから数々の記録を打ち立て、
昨年はついに賞金王に。今度は先輩・薗田峻輔が後輩・石川遼の
背中を追う立場になりました。
今年プロツアーにデビューし、ミズノオープンよみうりクラシックで
初優勝を飾った薗田は、先日、明治大学主催の初優勝祝賀会で
「賞金王を狙う!」と宣言しました。その為には、どこかで最大の
ライバル石川遼との直接対決を制しておかなければならないのは必須。
その2人が昨日、こんなにも早く、プロとしては初めて優勝を賭けた
死闘を繰り広げました。
最終日は異なる組で互いを意識しながらの一騎打ち。
流れに乗り切れない石川を薗田が捉え、あっと言う間に
追い抜きましたが、最終ホールの土壇場でまた石川が追い付き、
決着はプレーオフへ。
プレーオフに入ってからも両者一歩も譲らず、勝負は4ホール目まで
もつれ込み、最後は石川遼が76ホールに渡る死闘を制しました。
やはりここはプロとしての経験の差が物を言ったのでしょう。
敗れはしましたが、薗田のゴルフからは「僕が遼の連覇を阻止する」
という強い気持ちが伝わってきました。
プレーオフに入る直前の72ホール目。
グリーン手前の難しいラフに打ち込んだ絶体絶命の
アプローチショットがそれを表していました。
テレビ解説は、
「ここは無理をせずにボギー覚悟で賢明な選択をすべき」との論調。
「無理してパーを狙いに行けば、ダブルボギーにもなる」と結論付け
ていました。
これは、確かに正しい解説ではありましたが、薗田はこの難しい状況
からでも守りに入らずにパーを狙って攻めて行きました。
その結果、あの「プロゴルファー猿」並みの“旗包みショット”が
飛び出して、最終ホールをボギーで収めトップのままホールアウト
することが出来たのです。
昨日のこの薗田の場面は、昨年石川遼がミズノよみうりの16番ホールで、アプローチショットをピンに当ててミラクルチップインイーグルを決め、優勝へと繋げたあの場面に通じるものがありました。
どちらの場面もたまたま運が良かったと見る方もいらっしゃるでしょうが、これは攻めたからこその結果。逃げのショットでは旗にも絡まらなかったでしょうし、ピンにも当たりませんでした。
偶然ではなく必然なのです。
つまり、これからのゴルフ界を背負って行く若い2人は、これまでの
セオリーでは収まらない次元に達しているのです。我々伝え手にとってもこれまでの経験則やセオリーだけの放送では到底彼らの成長に追い付けないでしょう。
「20歳でマスターズ優勝」を夢に掲げる石川遼。
一方の薗田峻輔も負けじと「20歳代での海外メジャー制覇が夢」と
宣言しています。
近い将来彼らのその夢が現実になるのだとしたら、我々中継スタッフも、彼らが攻め続けるのと同様に攻めの気持ちを放送の中に持ち続け、彼らの夢に置いて行かれない様に夢が膨らむような中継をして、一緒に進歩して行きたいものです。
とにもかくにも歴史に残る名勝負でした。