「韓国の石川遼 2」
今年の9月、ソウルからKTX(韓国の新幹線)に乗って1時間程の、ウジョンヒルズカントリーで行われた韓国オープンに行ってきました。
招待選手として石川遼や矢野東が出場するということで日本でもちょっとした話題になっており、私も早くからこの大会を観戦する予定を立てていました。
第一のお目当てはもちろん日本人プレーヤーの二人。次に今や世界でも活躍している韓国の有望な選手を見て知ること。あとは、これだけ実績を残している韓国人選手達が一体どういう環境で試合をしているのか、韓国のゴルフ事情を肌で感じることでした。
そんな中、圧倒的な存在感を放つ選手が私の目に飛び込んで来ました。それが韓国の石川遼こと「ノ・スンヨル」。
決勝ラウンドに入った大会3日目。彼は、日本から参戦した矢野東と同じ組でプレーしていました。
まず、最初の衝撃は、スイングスピードの速さと飛距離。恐らくドライバーの平均飛距離を測れば300ヤードは計測されるでしょう。石川遼といい勝負か、もしかすると飛距離だけならスンヨルのほうが勝るかもしれません。
実はこの時、私はスンヨルがこれだけの実績(実績は前回のブログで紹介済み)を残してきた選手だとは全く知らず、「とんでもなく飛ぶけど、よく曲がる選手だなぁ。」という第一印象でした。
ただ、そこからがスンヨルの見せ所。曲がった先からのトラブルショットが抜群に上手いのです。ピンチに陥っても決断が速く、躊躇無くクラブを振り切り、ピンチを迎えているようには感じさせません。
更にスンヨルの最大の強みはパターの正確さ。
韓国のカップの位置は、急な傾斜の途中でもお構いなしに切ってあり、50cmのパッティングでも選手達は安心出来ません。これは日本ではあまり見られない位置で、実際にパットの名手の矢野東が1ラウンドに3パットを3度もしてしまうという難易度でした。
そのグリーンをスンヨルは何事も無いように寄せて入れてきます。この国のグリーンに慣れているという強みはあるのでしょうが、それを込みで考えても彼のパッティングのタッチは本当に絶妙でした。
矢野東も「あの若い選手は上手い!特にパターが上手い!」と飛距離やキレの良さよりもパッティングのセンスを一番に挙げていた程です。
ホールアウト後、「大器を見つけた!!」と嬉しくなった私は、居ても立っても居られずスンヨルに駆け寄り、片言の英語と、にわか仕込みの韓国語で会話を試みました。彼は物凄くシャイな青年で、あまり多くは喋りませんでしたが、最後に「来年は日本ツアーに行きたいです。」と堂々と笑顔で語ってくれた表情には自信が満ち溢れていました。
そのスンヨルがこの12月、来季の日本ツアー出場権を掛けたファイナルクォリファイングトーナメントに出場し、実績ある日本のプロ選手達がひしめき合う中、12位に食い込み、来季の日本ツアーの出場権を手中に収めました。
彼の飛距離、パッティング、トータルのセンスを持ってすれば、来シーズン、日本ツアーで賞金シード権を獲得するのは間違いないでしょう。優勝争いに何度も加わってくるであろうし、もちろん優勝も出来る器だと思います。
まだその顔にはあどけなさが残る18歳。来季は石川遼と一緒に10代プレーヤーとして更に日本ツアーを盛り上げてくれると思います。今からその活躍が楽しみでなりません。