Top

野村明大(ytvアナウンサー)『野村明大の徒然なる道』

橋下さんと従軍慰安婦発言を巡る問題…

さて昨日、
慰安婦の方が橋下さんとの面会を拒否するという
新たな展開がありました。

この問題、
いったん収束するかに見えましたが、
やはり、まだまだいろんな方向へ、
いろんな広がり方をする余地を秘めているのは、
間違いないのでしょう。

今回、橋下さんはいつもの如くに、
本当に沢山の発言をしてきたわけですが、

実はこの問題、
そもそもが、
そう単純な話でもないと思っています。

要するに、
「橋下発言のここが問題だ」
「いや問題ではない」という、
単純な白黒構図ではないんですよね、

実は今回の話は…


橋下さんは得意の論理構成力で、
今回の問題の論点整理を繰り返してきました。

そして本人も述べているように、
徐々に「言説が固まってきた」
印象を受けます。

今や、
内容への賛否、あるいは
国益への利益不利益について
意見分かれるとしても、

少なくとも、
橋下さん自身の論理は
明快になってきました。


くれぐれも断っておきますが、

「論理が明快である」ということは、
あくまで、
「論理破たんをきたしていない」
という意味であって、

無条件に、
「内容が正しい」「内容が有益だ」
ということを意味するわけでは
勿論ありません。

ただ、橋下さんの言説が、
論理矛盾なく整理されてきたことは、
確かです。


橋下さんに批判的なメディアも、
また橋下さん自身も、

「論理的」であろうとするわけで、


「理屈でここがあっている」
「ここが間違っている」
「こう言ったではないか」
「いやそれはこういう意味で言った」

という議論に
終始しがちなところがあります。

が…


実は今回、
最初にわーーっとこの問題が大きくなった背景には、

橋下さんが当初、
自身の「理屈」「論理」を表現しようとした際に、
橋下さんが用いた
コトバ、価値観、本音に対し、

女性の多くが、
理屈でなく無条件に
「嫌悪感」を感じる部分が含まれていた… 

というのが、

冷静な分析だと思っています。


もちろん、

嫌悪感を感じなかった女性、男性も
数多くいましたし、

逆にそこには嫌悪感を感じなかったが、
「理屈」の部分に承服できないと感じる人も
多くいたでしょう。

もちろん、
嫌悪感と理屈ダブルでNO!という人も、
いたでしょう。


多くの人が、
本当に様々な感じ方をしたことは、
間違いないでしょう。


いつもなら、時を経るごとに
「論点」がどんどん整理されてきて、

「要するにこの問題について、白なのか黒なのか」
という二元論に集約することが得意な
橋下さんですが、

今回、
その手法は不発だったと感じます。


むしろ、
説明を繰り返せば繰り返すほど、
「100%は同意できない」という人が
次々出現してきて、
収拾がつかなくなっていったと思います。


石原さんが一番良い例で、
「あれは侵略戦争でない」議論で、
また新たな対立軸が生まれたりしました。

まあ結局それは、
一旦収束した形ですが…

橋下さんに批判的なメディア・記者・識者もあれば、
橋下さんに好意的なメディア・記者・識者もあります。

揚げ足取りのような対峙の仕方をするものもあれば、
太鼓持ちになってしまっているケースもあります。

ただ、それもこれもひっくるめて、
オープンに、繰り返し、説明し続ければ、
「分かってくれる人には伝わる」と信じてやってきたのが、
従来の橋下流だったわけで、

「カコミ拒否」を打ち出した時は、
一瞬、その姿勢を放棄するのかと思いましたが、

結局そこを思いとどまったのは、
好判断だったと見ます。

さらに今回の問題は、
世界中でさらに様々な人が、
「関心を持ったり」「誤解に基づいて理解したり」
「事実誤認したままイメージで受け止めたり」
「訳されていく中でニュアンスを誤解したり」、

様々な受け止め方をしたことによって、

一つ説明したり釈明したからといって収束しない…
展開となりました。

ちなみにいろんな人の意見を聞きますと、

やはり最初の頃の、
「戦場という昂ぶった場で猛者達の性的エネルギーを…」
的な趣旨の発言に対しては、
理屈云々を抜きにして、
嫌悪感や違和感、不快感を持ったという女性は、
多かったように感じています。

その「嫌悪感」や「不快感」にとっては、

実は、
強制連行されたか否か、
あるいは、
他国も同じようなことをしていたのかどうか、

などの話は、

どちらであっても、
実は、
感じ方が変わる話ではないんですよね。 

そこが、
今回の問題の
「理屈だけじゃない」難しさなんだろうと、
思っています。

さて橋下さんも言ってるように、

「慰安婦問題について格好良いことばかり言っていた国会議員」たちが、
確かに皆、
だんまりを決め込んでしまっているような印象は、受けます。

今ここで発言しても、
誤解される可能性が高い、
と考えての選択なんでしょうか。

いずれにせよ、

国内で威勢の良いことを言うのは簡単だが、
国外に向けて通用、わたりあえることを言おうとすれば、
相当な覚悟と周到な情報収集・勉強・深い歴史認識が必要ですね。

それなしの、
国内向けの威勢だけが良いのは、

本当に内向きのナショナリズムですね。

各国が一斉に内向きのナショナリズムに走る状況が
一番怖いというのは、

まさに
歴史の教訓でもありますし、

逆説的な意味ではありませんが、
今回の橋下さんの件は、
いろんな意味で、
日本人の目を覚まさせる
キッカケになる部分も、
あるのではないでしょうか。

もうひとつ、

歴史認識の問題で、
ともすると、
対中韓、
だけが語られがちでしたが、

少し前の総理に対するものもありましたが、

「アメリカ」という国は、
やはり、
歴史認識に関していえば、
どちらかといえば、
どちら側にいる国家なのか、

ここは、
よく踏まえておかないといけないと思います。

歴史をみれば、
どちら側にいるかは一目瞭然だと思います。

領土問題に関してはそうでなくても、
歴史認識に関してはやはりそうなんだということを、
肝に銘じておく必要がありますね。

橋下さん言うところの
「威勢のいい政治家」は、
そこをどう考えていくのか。


真剣に主張するなら、
覚悟がいるでしょうね。

投稿者: 野村明大 日時: 2013年05月25日(土) |

アナウンサー