東日本大震災から8年、岩手県釜石市を訪れて、
あの日、多くの人たちの命を救った「防災教育」を取材しました。
今年開催されるラグビーワールドカップの会場になっている、釜石鵜住居復興スタジアム。
この場所は、8年前津波が押し寄せた、釜石東中学校と鵜住居小学校があった場所です。
取材させていただいた2月中旬は大寒波がきていて、海辺の町には珍しく、雪がちらついていました。
「あの日もこれくらい寒かった」と、今回お話を伺った菊池のどかさんはおっしゃっていました。
当時中学2年生だったのどかさんは、ジャージ一枚で高台に避難。周りの小学生や、地域の方々にも声をかけて一緒に逃げました。
のどかさんを救ったのは、釜石で受け継がれている「津波てんでんこ」の教えです。
「津波がきたらてんでばらばらになって逃げる」という意味なのですが、これは「自分だけの命が助かればいい」という考え方ではありません。
「家族や友人はきっと避難している。だから、生きていれば必ず会える。まずは自分の命を守ろう」という、大切な人たちの無事を信じて逃げる考え方です。
その考え方を知っていたからこそ、「津波がくる」と分かった瞬間に、避難するため身体が動いていたそうです。
8年前、私は神奈川の高校に通う2年生で、地震発生時はたまたま地元を離れて一人でいました。
避難指定場所に何とかたどり着けたのは、地震が起きて1時間ほど経ってからでした。
一方で、あの日、命を守るための行動ができた中学生がいた。
のどかさんのお話を伺って、いかに当時の自分に防災への知識がなかったか、ということを痛感しました。
今回お話を伺ったテレビ岩手の柳田カメラマンも、「子どもたちが正しい知識を持っていれば、自分で命を守ることが出来る」とおっしゃっていました。
災害では、想定外のことが起こる。
だからこそ想定外に対応するための、自分たちの命を守るための知識を、大人も、子供も持っていなければならない。
家族や地域の皆さんと、日頃から防災について話し合っておくことが、いざというときの「備え」につながると思いました。