◆ことばの話3315「女将はんか?女将さんか?」
平成ことば事情210「おけいはん」と2941「舞妓ハンとお茶屋さん」でも書きましたが、京都弁(大阪弁)の「はん」の付け方に関する例が、また出てきました。
2008年7月8日、大阪・道頓堀の「くいだおれ」が閉店しました。一日中、そのことで道頓堀界隈はフィーバーしていたようです。(テレビが中継するから。)
「くいだおれ太郎」と弟の「次郎」の二人体制で、看板人形も頑張っていましたが、名物女将みの柿木道子さんも、よくテレビに出ていましたね。『ミヤネ屋』にも中継でご出演いただきましたし、『ニュース・スクランブル』の中継にも、川田裕美アナウンサーと一緒に出てくれていましたよ。
さて、そのニュースの原稿を読んでいたら、
「女将はーん!」
というフレーズが出てきましたが、ちょっと待てよ、と。これは「はん」でいいのか?
もういちど、平成ことば事情210「おけいはん」の「はん」の原則を見てみると、
やはり大阪弁(京都弁)には何でも「はん」が付くと思うのは間違いなんですね。
「『はん』の前の単語の最後の音が『イ段』『ウ段』と『ン』には『はん』は付かず、『さん』が付く。」
のです!
「女将」は「おかみ」と、最後が「み」=「イ段」なので、「はん」は付きません。
そこで、原稿は、
「女将さん」
に直して読みました。女将さんも太郎も次郎も、長い間、お疲れ様でした!
2008/7/8
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◆ことばの話3314「対峙と退治のアクセント」
7月8日、『ミヤネ屋』の「秋葉原無差別殺傷事件から1か月」の原稿で私が読んだ中に、
「警察官と対峙するまでの間に」
というフレーズで
「対峙」
という言葉が出てきました。このアクセントを私は、
「タ/イジ」
だと思っていました。だって「退治」は、
「タ\イジ」
ですもんね。ところが念のため『NHK日本語発音アクセント辞典』を引いてビックリ!そこには、
「対峙(タ\イジ)」
「退治(タ/イジ)」
と、私が思っていたのと正反対のアクセントが記されていたのです!
『新明解日本語アクセント辞典』も同じでした。ビックリしたなあ。ちなみに同音異義語の、
「胎児(タ\イジ)」「対自(タ\イジ)」
はともに「頭高アクセント」で「対峙」と同じでした。
ただ、『新明解国語辞典・第6版』でアクセントを見てみると、
「対峙(タ\イジ、タ/イジ)」
「退治(タ\イジ、タ/イジ)」
で両方のアクセントが記してありました。「退治」の意味には、
「(古くは『対治』)外を与えるものを殺して、(すっかり)無くすること。(俗に仕事などを一気にかたづけることを指す)
とありました。「対治」なら「平板アクセント」で「タ/イジ」のような気がします。
アクセントも変わってきているようですが、次のアクセント辞典の改訂で、NHKさんは両方のアクセントを載せるでしょうか?今度、聞いておきます。
2008/7/8 |
◆ことばの話3313「太鼓の『音』」
7月8日、大阪道頓堀の「くいだおれ」が「今日で閉店」のニュースの原稿の最後に出てきた文章が、
「大阪・道頓堀の地でおよそ60年、庶民の味として大阪の発展を見守り続けてきた『くいだおれ』。太郎の太鼓の音が道頓堀に響くのも、今日が最後になります。」
というものでした。この中の、
「太鼓の音」
の「音」は「おと」と読むのか?それとも「ね」と読むのか?
ちょっと迷いました。Sキャスターに相談してみたら、
「うーん、そうですねえ・・・『おと』ですかねえ・・・」
という答え。私もそうではないかと思いました。「ね」と読む場合は「笛の音(ね)」のように、
「メロディーライン、あるいはそれに準じるようなものがある場合」
で、そうではない場合には「おと」と読むのではないでしょうか?
「くいだおれ太郎」の太鼓の場合は「演奏」している感じではないですから、やはり「おと」がふさわしいのではないでしょうか。いかがでしょうか?
2008/7/8 |