◆ことばの話3300「オストメイト」
神戸新交通・ポートライナーの駅のトイレに入ったときに、トイレの入り口にあったこんな言葉が目に付きました。(写真左)
「オストメイト」
おや?なんだっけ、これ?聞いたことがあるぞ。たしか、
「人工肛門」
とかそんな感じのことだっけ?俳優の渡 哲也さんが手術されたのではなかったか?
そう思って大阪まで帰ってきたら、今度はJR大阪駅でも見つけました。
(写真右)
よく見ると人の左側腹部に「十字のマーク」がありますね。
『現代用語の基礎知識2008』で「オストメイト」を引いてみました。あれ?「オストメイト」は載ってなかった。そのかわり「オストミー」は1行だけ載っていました。
「オストミー」=「人工肛門を作る手術」
国語辞典はどうか?『精選版日本国語大辞典』は・・・「オストメイト」、なんと載っていませんでした。『新明解国語辞典』も載っていません。『デジタル大辞泉』にも『明鏡国語辞典』にも、今年1月に出た『広辞苑・第6版』にも載っていません。同じく今年1月に出た『三省堂国語辞典・第6版』は・・・おお、さすが飯間さん!載っていました!(早稲田大学講師の飯間浩明さんが編集にあたられたのです。)しかも「第5版」には載っていませんから、今年1月の改訂(第6版)で採用された言葉です。
「オストメイト」=人工こうもん(肛門)や人工ぼうこう(膀胱)を使用している人。
簡潔にしてよくわかる表現ですね。
駅の公衆トイレにこういった表示が増えている(表示がある)ということは、オストメイトの人たちが使える公衆トイレが増えている(と言うか、ようやくそういった動きが出てきた)ということで、バリアフリーやユニバーサルデザインの考えから言うと、喜ばしいことではないでしょうか。もちろん、まだまだ数は多くないのでしょうが。そんなことにようやく気づいた一日でした。
見えていても、見えていないものですね。
2008/7/1
(追記)
また神戸に行ってきました。神戸女子大で「オストメイト」の話をすると、誰も知りませんでした。
「それは男性用トイレだけか?女性用トイレで見た覚えがないが・・・」
「ポートライナーの駅は『市民病院前(キャンパス前)』で、病院のある駅だからオストメイトを使えるようにしてあるのではないか。」
「実際のオストメイト用トイレの中はどうなっているのか?」
などの質問が出たので、また取材してきました。
まず、「女性用トイレにもあるのか?」の質問は「ある」。写真(左下・パネル)のように表示が出ていました。
そして「市民病院前駅だからあるのではないか?」について聞こうと思ったら、駅員が見当たらなくて、聞けませんでした。
そして「オストメイト」の実際の設備ですが、写真(右上)のとおり。車椅子用の大きなトイレの中に備えてありました。(男子トイレの方で撮影しました。誤解なきよう。)
Google検索(7月2日)では、
「オストメイト」=8万7400件
でした。INAXのHPで「オストメイト対応トイレ」のサイトを見てみると、
http://dds.inax.co.jp/ostomate/
「オストメイトとは・・・直腸がんや膀胱がんなどにより、臓器に機能障害を負い、腹部に人工的に排泄のための孔(ラテン語でストーマ)を造設した人のことです。日常の排泄行為には様々な苦労があります。」
と説明があります。トイレ内での排泄物の処理は、
「人工肛門を作った腹部の穴のパウチを開口し、汚物を汚物流しに捨て、パウチをすすいで腹部の汚れを拭い、新しいパウチを装着する」
という作業が必要なようです。サイトにはまた、
「オストメイト対応の多目的トイレが設置されるケースが次第に増えてきました。」
とも記されていました。
2008/7/2
(追記2)
上記のポートライナーのトイレの看板の下には、もう一つ看板がありました。
「こうべ・だれでもトイレ」
これはまさに「バリアーフリー」ですよね。
昔のベルサイユ宮殿の庭のように「どこでもトイレ」だと困りますけれど・・・。
2008/7/3
(追記3)
先日の東京出張のときに乗った新幹線の車内のトイレに、なんと「オストメイト」がありました!車椅子でも入れる広さのトイレでしたが、オストメイトの上には、
「手洗いではありません!」
という注意書きが貼られていました。
2013/2/15 |