◆ことばの話3072「タレントで弁護士?」
12月5日、朝日新聞と毎日新聞の朝刊に、来年1月に行われる大阪府知事選挙に、弁護士でタレント活動も行っている橋下(はしもと)徹氏の擁立を、自民党が考えているという記事が出ました。これに関して元・用語委員の報道H氏が、
「こういうの、道浦さん、好きでしょ」
と言って、毎日新聞の記事を見せてくれました。
そこには、橋下氏の肩書き紹介が、
(毎日・朝刊)「タレントで弁護士の橋下徹氏」
となっていました。
「つまり、『タレント』と『弁護士』のどちらが『本業』で、どちらを先に書くのか?」
という問題です。ポイントは2つ。
- 橋下氏の本業はどちらか?
- 本業とサイドビジネス(?)のどちらを先に書くのか
ということです。
さっそく各紙朝刊と夕刊を見比べました。それによると
(読売・夕刊)「タレントで弁護士の橋下徹氏」
(朝日)「大阪弁護士会所属の橋下徹氏」
(産経)「弁護士でタレント活動も行っている橋下徹氏」
(日経)「タレントとしても活躍する弁護士の橋下徹氏」
という具合。明らかに産経と日経の表現がわかりやすいですが、なぜこんな問題がでてくるんでしょうか?
うーーーーん、と考えたら「チーン」とひらめきました。「の」という助詞の結びつきが強いから、「の」で結合した
「弁護士の橋下徹氏」
というのが一くくりになっているのに対して、「で」というのは「おまけ」感があります。その意味では、
「タレントで(=おまけ)、弁護士(=本業)の橋下徹氏」
となるのですが、「職業と氏名」というふうに区分けを考えると、
「タレントで弁護士(=職業)、の橋下徹氏」
となるのです。この後者の場合、いくつかの職業をかねている時は、やはり、
「本業、2番目、3番目・・・」
という風に並べるのが「筋」でしょう。そうすると、
「弁護士でタレント(=職業)、の橋下徹氏」
となります。そうすると、並べ方は一つとは限らない。ただ、
「読む時に、切るところを考えないと、意味が違ってくる」
という事態を招くのですね。注意しましょう!
2007/12/5
(追記)
いったんは出馬を否定した橋下氏、どうやら本気で出馬の意向だそうで、明日(12月12日)午前11時30分から会見をするそうです。その時間は、各テレビ局、お昼のニュースの時間。もう少し早くして欲しいものなんですが・・・。そうは言っても、ねえ。 2007/12/11
(追記2)
11日の会見は、結局1回目が午前10時から大阪府庁で、2回目が午後1時半からリーガロイヤルホテルで行われました。
また 12月11日の読売新聞夕刊では、「弁護士」が先に来て、
「弁護士でタレントの橋下徹氏」
になっていました。5日の夕刊とは順番が逆です。
2007/12/17
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