◆ことばの話2815「土地鑑か?土地勘か?」

読売テレビの視聴者センターが毎週、視聴者の皆様からの声をまとめた『週報』というものを出しています。その中に、
「土地勘」
についての話が載っていました。確か警察用語では、
「土地鑑」
というが本来なのではなかったでしょうか。警察用語では、
「鑑の捜査」
なんて言葉もあったような気もしますし。
この言葉については、テレビ朝日・アナウンス部のサイト「日本語どらのアナ・日本語研究室」で「言葉の雑学その2・土地カンで捜査のプロがカンカン!?」と田原浩史アナウンサーが書いています。
テレビ朝日では「土地勘」と書くようにしているんだそうです。
http://www.tv-asahi.co.jp/announcer/special/doranoana/lab_010/body.html
田原アナには、用語懇談会で2か月に1回ぐらいお会いしています。

また、読売新聞大阪版・夕刊に連載されている「ことばのこばこ」(2006年10月12日)に、梅花女子大学の米川明彦教授が、「土地鑑」について書いてらっしゃいました。
「近年、多くの新聞やテレビなどでは『土地勘』と書いているが、本来は『土地鑑』だ。」
という書き出しで、「土地鑑」は、
「『勘』では成り立たないことばだ。勘違いしないように。」
と、まとめてらっしゃいます。
ということは、ボクのダジャレの出番はナシね。
Google検索(2月15日)では、
「土地勘」=40万3000件
「土地鑑」= 6万7900件
でした。あ、「第六感」が働いた!これも調べてみよう。
「土地感」= 4万1900件
やっぱり!こんな「当て字」をしている人も、随分いましたね。
1996年に出た朱色の表紙の日本新聞協会の『新聞用語集』を紐解いてみると、
「とちかん」・・・(土地鑑、土地感▲)→(統)土地勘
になっているではありませんか!(▲は間違いということです)テレビ朝日さんは、それにしたがっていると言うことですね。でも本来は「土地鑑」なのになあ・・・と思って、ちょうど完成したばかりの緑の表紙の『新聞用語集2007年版』を見てみると、
「とちかん」・・・土地感▲→土地勘 [注]本来の表記は「土地鑑」
となっていて、「本来の表記」である「土地鑑」を[注]として書いてありました!
確かに「鑑」は画数が多い漢字ですが、「選手名鑑」とか「統計年鑑」とかいった言葉で馴染んでいる漢字(感じ?)でもあるし、使っていく方向でいいのではないですかねぇ。私はそう思います。
2007/2/15


◆ことばの話2814「ものの見事なショット」

1月21日の深夜(1月22日午前0時17分)女子ゴルフ世界選手権を実況中継していた日本テレビの平川健太郎アナウンサーがいい声で、
「ものの見事なショットでした」
と言ったのを耳にして
「?????」
という気になりました。
「見事なショットでした」
はもちろんOK。また、
「ものの見事に打ちました」
もまあ、OKかな。一番ピッタリくる「ものの見事に」は、
「ものの見事にこけました」
のような気がするのですがね。これはよく似た別の表現をくっつけてしまって、シンプルな表現を複雑にした時に起こりうる失敗、混交表現ですね。
この話を隣の席のHアナウンサーにしたところ、
「連休最終日の昨日の夜、テレビを見ていたらフジテレビのアナウンサーが、
『家路につくまで、安全運転でお願いしたいですね。』
って言ってたんですけど、これっておかしいですよね。もう『家路』には、ついてるって。正しくは『家に(帰り)つくまで』ですよね」
かっこをつけて、言い慣れない言葉を挟もうとすると、こういうことになるんですよねえ・・・。ちゃんと最後のコメントを言うまで、言葉の安全運転をお願いしたいですね。
2007/2/13


◆ことばの話2813「バルトと第九」

1月10日、NHKのニュースで、大相撲の西前頭3枚目・把瑠都(バルト)が初場所4日目の1月10日から休場すると報じていました。それを聞いて私は、
「バルト・・・バルトと言えば去年、『バルトの楽園』という映画があったよね、松平健主演で。第九の映画。まだ見ていないけど。」
それを聞いたKアナが、
「だいく・・・なんですか、キューじゃなくて」
と、小さな声でつぶやいたのを、私は聞き逃しませんでした。
「おいおい『第九』を知らんのか?」
と聞くとあわてた様子で、
「も、もちろん、し、知ってますよ。」
と言ったものの、目が泳いでいます。
しっかりしてくれよなあ、まったく。オン・エアーの前にチェックできて良かったです。
いくらあまり興味のない分野だと言っても、一般常識は必要ですよ、この仕事は特に。
それにしてもまあ、関取の把瑠都(バルト)からベートーベンの第九に話が飛ぶとは予測できなかったのかもしれませんね。
2007/2/14


◆ことばの話2812「蚊帳」

新聞用語懇談会放送分科会で話し合っていた「助数詞」の表が出来上がりました!そこでさっそく、うちの若手アナウンサーに読ませてみました。いえ、助数詞を読ませたのではなく、その項目を読ませたのです。まず、2年目の男性アナウンサーに読ませたところ、
「鏡台(けいだい)」(正しくはもちろん「きょうだい」。「境内」と間違えたようだ・・・)
「蚊帳(かちょう)」(かや)
「証文(しょうぶん)」(しょうもん)
「鼓(つつみ)」(つづみ)
「和弓(わゆみ)」(わきゅう)
と読みやがりました・・・・。
もう一人、4年目の若手女性アナも「蚊帳」は危なくて、なんとか「かや」と読めたもののアクセントが「頭高アクセント」で、
「かや(HL)」
でした。それでは、「茅葺屋根」の、
「茅」(もしくは「萱」)
ですよ!
昔の生活の中のモノの名前などが「死語」になっているということが如実に表れていると思います。このままだと
「畳」「障子」「襖」
なども早晩、読めなくなるでしょう。(「襖」は既に読めないかも)でも、「知識」として知っておく必要はあるし、「本」を読んでいたら、読めるはずなんだけどなあ。
これに関して日本新聞協会の言葉のご意見番・用語専門委員の金武伸弥さんに聞いたところ、
「『蚊帳』は常用漢字表の『付表』」にあり、表内訓扱いです。『行灯』『足袋』は読めましたか?『襖』は常用漢字表にないから無理でしょう。助数詞一覧では『筏、団扇、鉋、硯、簾、算盤、箪笥、薙刀、暖簾、袴』など表外字・表外音訓ですので仮名書きにしていますが、漢字だけだったら読めないでしょう。『テスト』された語は常用漢字ですから義務教育修了者は読めなければいけないのですが。『足袋』は常用漢字表付表にありますが、『行灯』はないのでルビを付けるべきだったと思います。」
とお返事いただきました。いやいや、このぐらいの漢字はアナウンサーたるもの、読めないと、胸を張って「プロ」とはいえないでしょう。
知らないことは恥ではありません。知らないままにしておくことが恥なのですから、これから教育します!
2007/2/12


◆ことばの話2811「ノーワク宇宙飛行士」

アメリカという国は、よく分らないなあと、また改めて思いました。去年12月、スペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗した女性宇宙飛行士が、恋敵の女性に対する殺人未遂罪で起訴されたのです。この女性宇宙飛行士の名前は、
「リサ・ノーワク」
日本テレビは伝えていました。「脳が沸いたのか」とみんな言っていました。
しかし、新聞などではどうも表記が違うようなのです。(2月7日)
(読売新聞)ノワック
(産経新聞)ノワク
(朝日新聞)ノワク
(毎日新聞)ノワク
(フジテレビ)ノワク
ということでした。「ノワク」が主流のようですね。綴りは、
「NOWAK」
だそうです。「ノ」の所にアクセントが来るのでしょうね。だから長音で「ノー」という表記もあるのでしょう。
初めて出てくる外国人の名前(や地名)はこのようになかなか統一しにくいという事情がありますね。
2007/2/13
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