◆ことばの話2585「オリエンタルラジオとレギュラーとトニー谷」
今、人気絶頂のお笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の二人。ハイテンションなセリフをリズムに乗せた芸を、舞台一杯に繰り広げています。使っている言葉は、共通語と言うか関東の言葉ですね。
一方、これも全国区の人気で、ハイテンションなリズムに乗った芸を見せるのが「レギュラー」の二人。こちらは関西弁です。
あるとき、テレビで「レギュラー」を見ていた時に、ふと、ひらめきました。
「『レギュラー』と『オリエンタルラジオ』の、リズムに乗せてしゃべる芸は、『トニー谷』の『あなたのお名前、なんてーの?』と同じリズムではないか!?」
ということです。
どれも基本は2拍子なんですよね。そして、しゃべっている言葉は、
「七五調」
というか、「8拍」に基本が置かれているんです。ということは、「俳句や短歌にも通じるところがある」ということです。
つまり、新しい芸のように見えて、実は、根っこは昔からある芸のパターンではないかと思ったわけです。そう感じると、今はもう定着した「日本語のラップ・ミュージック」も、若者が受け入れる理由も「新しい音楽だから」ということに加えて、根っこのところで昔からそういったリズムを受け入れる素地があったのではないか?という気もしてきます。
でもラップは、私は嫌いなんですが。(そのあたりのことは、平成ことば事情2335「僕が日本語ラップを嫌いなわけ」をご参照ください。)
リズムに注目してみると、またオリエンタルラジオやレギュラーを見る楽しみも増えるのではないでしょうかね。
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2006/6/17 |
◆ことばの話2584「失礼な対応を受けて」
4月14日の読売テレビのお昼の「ニュースD」の中で放送した、明石の歩道橋圧死事故を受けて最高検察庁長官が陳謝というニュースで、
「失礼な対応を受けて」
という一文がありましたが、なんだかヘンな感じがしました。なぜだろう?似たような言葉である「失礼」「無礼」「非礼」の違いはどうなんでしょうか?
「失礼」と「無礼」は「な」をつけて形容動詞として使えそうですが、「非礼」は形容動詞になりにくいような感じがします。
理由は形容動詞の連体形を感嘆詞のように使って、
「失礼な!」
「無礼な!」
とは言えても
「非礼な!」
とは言えない気がするからです。
一応辞書を引いて見ましょう。こういうのはやはり『日本国語大辞典』が一番詳しいのでは?と思って引きました。
*「失礼」(名)=(1)(形動)礼儀や礼式を欠くこと。礼儀をわきまえないこと。また、相手に対して礼儀を欠いているさま。先例故実にはずれること。無礼。欠礼。失敬。
(2)((1)の意をこめて挨拶に用いる)礼儀に外れるが止むを得ず行なわなければならないような場合、それをわびる気持を表わす語。人に問いかけたり、他者の話題に口をはさんだりするときに用いる。
(3)別れること。いとまごいをすること。また、退出するときや別れるときに挨拶としても用いる。
(4)相手の無作法をたしなめたり、非難したりするときにいう語。
*「無礼」(名・形動)=礼儀にはずれること。また、そのさま。ぶしつけ。失礼。むらい。ぶらい。ふれい。
*「非礼」[名](形動)=礼でないこと。礼儀にはずれること。また、そのさま。そのような行儀。無礼。失礼。
一応、「非礼」も形容動詞のようではありますねえ。一番意味がたくさん書いてあったのは「失礼」です。それだけよく使われて応用の範囲も広いのでしょう。
そうすると「失礼な対応」という言葉自体に違和感があるのではなく、「受けて」が違和感の元なのかな?
あ、そうか、「対応」という言葉は「対応する」ということですから、「AさんからBさんへのある行動」についての「反応としての行動」が「(Bさんの)対応」ですね。
「A→B、B→A」
における「B→A」が「対応」です。今回はAが遺族側、Bが警察側。そしてこのニュースで問題としているのは、まさに「B→A」つまり「警察の遺族への対応」ですね。それが「失礼」だったということです。そういった「対応」を受けたAの遺族側が、また何らかの行動を起こす、ということなのですね。
ニュース原稿では「○○の対応(行動など)を受けて」という「つなぎ言葉」がよく使われますが、これもその一つなのです。「受けて」の代わりに「対して」を使っても意味は同じです。
ただ、「受けて」という言葉が持つ意味に「(受動的に自ら)受ける」「引き受ける」というのがあるので、この場合に「対して」の意味で使われているのに「受ける」という意味を感じてしまい、本来「対応」に続く動詞は「受ける」のではなく「(対応を)とる」「(対応)する」ものなので、その部分に違和感を覚えたように思います。
内容には問題なさそうです。考えすぎましたか・・・。
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2006/6/17 |
◆ことばの話2583「100万泊」
サッカーワールドカップ・ドイツ大会の開幕を控えた5月29日、テレビ朝日のお昼のニュースを見ていたら、この時期になってFIFA国際サッカー連盟が、予約していたホテルの宿泊「100万泊分」をキャンセルしたというニュースを女性アナウンサーが伝えていました。その、
「『100万泊』の『泊』」
を、その女性アナは、
「パク」
と読んでいました。そのあとの「200万泊分」の「泊」も、やはり
「パク」
と読んでいて、ちょっと違和感がありました。
たしかに「泊」の前が「万(まん)」で「ん」が来るので「パ」と半濁音になるのは間違いではないかも知れません。同じようなケースで「3泊」は「サンパク」が正しくて、「サンハク」では間違いでしょう。「4泊」も同じく「ヨンパク」です。
ではなぜ「100万パク」に違和感を覚えたのか?それはおそらく、
「『泊』の前に来る数字があまりにも大きすぎて、実感がないから」
でしょう。たかだか「3泊4日」か「4泊6日」、あるいは「7泊8日」ぐらいの旅行しか経験していない我々にとって、「のべ泊数」として出てきた「100万泊」というのは、あまりにもなじみがなさすぎる。だから半濁音になるのに違和感があると思うのです。基本は「泊」の読み方は「ハク」。ただし、
「数詞+泊」
がなじみのあるものであり、しかも「泊」の前が「ん」の場合にのみ「パク」という読み方が使われるのではないでしょうか?そうだとすると「1000泊」も「センパク」ではなく
「センハク」
と読むべきでしょう。「センパク」ではあまりにも「浅薄」なイメージがありますからね。いかがでしょうか? |
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2006/6/17 |