◆ことばの話2492「おめでた婚」
2月17日の産経新聞に、
『「おめでた婚」サポート』『3カ月内の挙式特典プラン続々』
という記事が載っていましたが、この言葉は1月30日の読売新聞のコラム「ことばのこばこ」でも、そのまんまの言葉「おめでた婚」というタイトルとして、梅花女子大学の米川明彦教授が書かれてました。それによると、これは「できちゃった婚」の「言い換え」の言葉であると。また、
『「できちゃった婚」は俗語なので新聞には使いにくいためだろう』
『この「おめでた婚」は結婚産業から出た言葉だ』
このほか、
「ダブルハッピーウエディング」(おめでたと結婚の二重のハッピーということ)
「ママリッジ」(ママになってマリッジ[結婚])
という言い方もあるが、英語だと、
「ショットガン・ウエディング」
という「父親の発想」だと紹介しています。なるほどね、ショットガン・・・
Google検索では、(2月16日)
「できちゃった婚」= |
8万7000件 |
「おめでた婚」= |
1万9600件 |
「ダブルハッピーウエディング」 |
=374件 |
「ママリッジ」= |
204件 |
「ショットガン・ウエディング」 |
=245件 |
去年(2005年)の11月1日に検索したときには、「おめでた婚」は137件、2004年4月に検索した時には「できちゃった婚」も7660件しかなかったのに、もんのすごく増えていますね!
ついでに
「作っちゃった婚」= |
427件 |
「授かり婚」= |
602件 |
「でき婚」= |
1万3200件 |
「できちゃった結婚」= |
8万8900件 |
「マタニティ結婚」= |
96件 |
でした。「できちゃった結婚」は2001年に放送されたフジテレビのドラマのタイトルでもありました。「作っちゃった婚」「授かり婚」は、去年11月の検索時(それぞれ、673件、658件)より減っています。「おめでた婚」が定着しつつあると見ていいでしょう。
ところで、先日実家に寄った際に、母からこんな話を聞かされました。
若くして戦死した、母の叔父の遺族年金の受給者変更の手続きのために、戸籍抄本を取ってきて見てみたところ、
『母の両親(私の祖母)の「入籍」(戦前ですから。今で言う「婚姻届の提出・受理」です)は、母の誕生の1か月前である』
ということがわかったと言うのです。つまり、戸籍上はまさに今で言うところの、
「できちゃった婚」
であると。
その件に関して母が、90歳を越えた祖母に問うたところ、
「昔はみんなそんなものやったのよ・・・」
という返事が返ってきたということです。
それを聞いて私が考えたのは、これは今のような「できちゃった婚」ではなく、そもそも家から遠い役所まで出張って「届け」を出しに行く必要性や迅速な正確さが、今から70年以上まえには求められていなかったのではないかということです。
そう言えばこの間、ナイジェリア出身のタレント、ボビー・オロゴンさんが、実は年齢をごまかしていた(32歳と言っていたのが戸籍上は39歳であった)ということがありましたが、それについて、同じくアフリカ出身のムルアカさんが、
「アフリカではよくあることなのよ」
と言っていましたが、たしかにそうなんだな、と思いました。年齢をごまかすということがよくあるのではなく、戸籍があってもわりと緩やかな(悪く言えば、いい加減な)モノであるということです。日本だって70年ほど前は、今のアフリカと同じような国だったのだなというようなことを想像したのです。それは、そんなに昔のことではありませんね。
なお、「平成ことば事情331できちゃった婚」もご覧ください。 |
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2006/2/17 |
(追記)
「なるトモ!」の「今日は何の日・2月21日」に、2001年の2月21日の、松嶋菜々子・反町隆史の結婚を報じたスポーツ紙を紹介していました。その紙面には、
「ナチュラル婚」
という文字が出ていました。ふーん。Google検索では(3月1日)、
「ナチュラル婚」=6件
でしたが、注目はその中に松嶋・反町の結婚を扱ったものの他に、最近は「できちゃった婚」が増えているので、これまでのような普通の結婚を指して「ナチュラル婚」と言うという記述があったことです。これは携帯電話が増えたことによって、家の電話を「家電」「ウチ電」と呼ぶようになったことと似ていますね。まだそういう動きは大きくはないようなので、今後の動向を見守ります。 |
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2006/3/1 |
(追記2)
報道局のアナウンサーの机の上に置いてあった、内閣府の「平成17年版・国民生活白書〜子育て世代の意識と生活」という本をパラパラ眺めていたら、その54ページ「結婚行動における新しい流れ」の中に、
「法律婚へのこだわりー『できちゃった婚』」(20代前半までの結婚は「できちゃった婚」が主流)
という記述がありました。1980年には12、6%だった「できちゃった婚」が、2000年には26、3%と20年間でほぼ2倍になったこと、また15歳〜19歳では第一子の8割以上、20歳〜24歳ではの約6割が「できちゃった婚」で生まれているのだそうですから、若い世代での「できちゃった婚」率の高さには目を見張りますね。 |
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2006/3/7 |
(追記3)
関連の話題で・・・。
『三島由紀夫レター教室』(三島由紀夫、ちくま文庫、175ページ)で、「マタニティドレス」のことを指して、
「マターナルドレス」
という言葉が出てきました。最近は、全然聞いたことがない表現なんですが・・・。
Google検索では(3月27日)、
「マターナルドレス」=0件
「マタニティドレス」=3万3500件
でした。「マターナルドレス」、1件もないとは・・・・。
『Daily Concise English Dictionary』の和英で「妊婦服」を引いたら、
「a maternity dress」
とありました。また、「マターナル(maternal)」には「母の、母らしい、母方の」という意味は書いてありましたが、「妊婦の」という意味は「マタニティ(maternity)」の方にしか載っていませんでした。
「マターナルドレス」というのは、三島の造語だったのでしょうかね? |
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2006/3/27 |
(追記4)
追記3と同じく『三島由紀夫レター教室』(三島由紀夫、ちくま文庫:1991、12、4第1刷、2000、11、25第21刷)の中で、
主人公の若い二人は、今で言う「できちゃった婚」「おめでた婚」で、妊娠を機に結婚披露宴を中華料理屋で開くのですが、その様子を見た、ヒロインのいとこの丸トラ一君は、
「この御新婦さんが御産婦さんだと思うと、僕はおかしくてたまりませんでした」
と言っている場面などは、当時の「できちゃった婚」に対する若者の見方のようなものが垣間見えました。 |
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2006/3/28 |