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◆ことばの話2396「トウかムネか?」
姉歯設計士の耐震設計書偽造で、強い地震で倒壊の恐れのある建物が毎日のように発表されています。一度は「安全」のお墨付きを得た後で、念のため調べてみると「やっぱりダメ」ということも。これでは何のための検査かわかりません。しかしそれだけ書類のチェックが難しいということでもあります。費用もかかるようです(金と命と、どっちが大事だっ!)
さて、そうやって発表される建物の数を
「棟」
という助数詞で報じていますが、これは「トウ」と読むのか、それとも「ムネ」と読むのか?
NHKは「ムネ」と読むことに決めているそうです。NHKの人から話を聞きました。テレビ朝日は「トウ」と読んでいるようです。「報道ステーション」を見ていたらそうでした。
日本テレビは、最初は「トウ」とも言いましたが、今は「ムネ」のようです。
しかし、発表された建物は、ほとんどがマンションやホテルで大体が8階・9階建て以上の高層ビル。そうすると「ムネ」よりも「トウ」でいいと思うのですが、いかがでしょうか。
ところで、こういった建物を数える助数詞には、
「棟、軒、戸、室、部屋」
というように、いろいろな数え方があります。これらの単位は、どれももともとは、
「建物の部分」
を指しています。「棟(むね)」は屋根のところにある横に長い柱ですよね。屋根の一番高いところです。「棟上(むねあげ)式」の「棟(むね)」です。「軒」は「けん」でもありますが、家の一部分としては「のき」ですから、屋根の下の部分ですよね。「軒下(のきした)」の「のき」です。そして「戸(こ)」はドア、「と」。「室(しつ)」はその家の中の一部分の区切られたところ、「室」と「部屋」は同じような感じですかね。
ここに書いた順に、だんだん指す部分が、低く・小さくなっています。ということは、建物の規模によって助数詞の使い方も、
「棟>軒>戸>室>部屋」
というように使い分けてはいかがでしょうか?
また、住む家の数え方がだんだん小さくなって来ているような気がします。これは、大家族制の崩壊・核家族化、都市化のためなのでしょうか?
そんなことを考えていると、
「助数詞から見える家族構造の変遷」
なんて論文が書けるかもしれませんね。 |
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2005/12/5 |
(追記)
12月9日に行われた新聞用語懇談会放送分科会で、テレビ各社の対応を聞いてみたところ、
(NHK)=ムネ(人が住んでいたらムネ)
(日本テレビ)=ムネ(イットウ、ニトウと言うと、一等、二頭に聞こえそうだから、最初にムネにしたら、その後高層ビルがたくさん出てきて、あれあれ、という感じ。)
(テレビ東京)=ムネ(だと思う)
(フジテレビ)=ムネ(最初はバラバラだったが、最近、統一した)
(TBS)=トウ(マンションが多かったので)
(テレビ朝日)=トウ(マンションなど高層の建物だったので)
ということでした。 |
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2005/12/12 |
(追記2)
2006年3月7日のお昼のニュースで、札幌のマンションでも耐震基準に満たないものが出たというニュースを伝えていました。その中で建物の数を表すのに、
(テレビ朝日) |
「28棟(トウ)」 |
(NHK) |
「79の建物」「5つの建物」「33棟(トウ)」 |
というふうに、テレビ朝日は「棟(トウ)」を使い、NHKは助数詞を使わない読み方を中心にしていましたが最後の一つは「トウ」を使っていました。「建物は全て『ムネ』と言う」と言っていた去年12月の段階と、状況が変わったのかもしれません。 |
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2006/3/7 |