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◆ことばの話2394「ホリーデー・ツリー」
11月30日、ニューヨークのロックフェラーセンター前の大きなクリスマス・ツリーの電球の点灯式が今年も行われました。毎日新聞電子版によると、今夏のハリケーン「カトリーナ」「リタ」襲来で被災した子供たちやブルームバーグ・ニューヨーク市長らが見守る中、約3万個の電球に灯がともされ、数千人の見物客から歓声が上がったそうです。今年のツリーは、ニュージャージー州で育った高さ約22メートル、重さ約9トンの木だそうです。ニューヨークの冬の風物詩になっているこの恒例行事は1931年、マンハッタンの摩天楼を象徴するロックフェラーセンターのビルの建設に携わっていた労働者たちが、現場にツリーを飾ったのが始まりで、電球は来年1月7日まで点灯されるということです。そういうシーズンですね。
NHKラジオ第一を聞いていたら、そのニュースを伝えていました。しかしその際に、こんなことも言っていました。
「今年はこれを『クリスマス・ツリー』と呼ぶか、『ホリデー・ツリー』と呼ぶか、論争になっている」
というのです。かつて「人種の坩堝」と呼ばれたニューヨークは、当然のことながら、いろんな宗教の人が集まっています。日本の場合は、大半の人にとってクリスマス・ツリーは「風物詩」あるいは「商業的広告塔」であって、宗教的な意味合いは感じていないと思いますが(クリスチャンは別だと思いますが)、ニューヨークではもっと「宗教」がしっかりとしていて、クリスチャン以外の人にとっては、
「クリスマスはキリスト教のお祭りなので、その名前を冠したツリーはけしからん!」
という批判の声も出ているのでしょう。
ツリーに関しては初めて聞きましたが、以前、「クリスマス・カード」は同じ理由で、
「ホリデー・カード」
と称され、そのカードに記される言葉も「メリー・クリスマス」ではなく、
「ハッピー・ホリデー」
だというのは聞いた事があります。「PC=ポリティカル・コレクト」に近いようなものなのでしょうか?でも、そもそもヨーロッパの「冬至祭」を取り込んで、キリストの誕生日を12月25日に設定してしまったということから考えると、もともとこの時期に行われるお祭りが、クリスマスに取り込まれてしまったのですよね。あ、そうか、だから名前まで乗っ取られたままであるのはイヤ、ということかな?
日本では、まだこういった動きは感じられませんが、もしかしたら、日本もそういうふうになるのでしょうか。宗教に対する感じ方、接し方が、日本と他の国ではどうやら随分違うようです。いまさらながら、そう感じました。一神教と多神教の違いなのかなあ??
Google検索(12月7日)では、
「ホリデー・ツリー」= |
311件 |
「クリスマス・ツリー」= |
420万0000件 |
「ホリデー・カード」= |
269件 |
「クリスマス・カード」= |
58万8000件 |
「ハッピー・ホリデー」= |
2万5600件 |
ここまでは「・」があってもなくても件数は同じでした。使用頻度はあきらかに「ホリデー」は「クリスマス」の足元にも及びません。そして、
「メリークリスマス」= |
181万0000件 |
「メリー・クリスマス」= |
4万8000件 |
でした。
どちらの言い方を使うかは、「こうしなきゃいけない」と言うよりは、相手への(相手の宗教への)気遣い・心配り、というような気がしました。みなさん、少し早いですが、
「ハッピー・ホリデー!」 |
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2005/12/7 |
(追記)
これをネットに出そうと思っていたその日、12月9日の産経新聞「ポトマック通信」というワシントン支局特派員のコラム(だと思う)で、気仙英郎氏が、
『「クリスマス」は禁句?』
というタイトルで書いていました。それによると、アメリカでは店内でクリスマス・ソングを耳にすることは、意外に少ないと。そして店員からも、
「ハッピー・ホリデー」
と言われることはあっても、
「メリー・クリスマス」
とは言われないそうです。キリスト教以外の宗教にも気を使って、店員が「メリー・クリスマス」と客に言うことを規制している店が多いのだそうです。やっぱりね。
しかし、最近は逆に、
「商売にクリスマスを使っておきながら、『クリスマス』という言葉を使わないのは、どういうことだ!」
と、「カトリック連盟」や「アメリカン・ファミリー協会」といったカトリック系の団体から強い反発を受けることもあるそうです。
それを受けて、小売世界最大のウォルマート・ストアーズはこの冬、「クリスマス」という言葉を「使う」ことを決めたのだとか。ただ、他の小売り大手は、これに追随することなく、今までどおり「クリスマスは使わない」のだそうです。
ふーん、やはり11月の初めから「クリスマス、クリスマス」と街中が彩られる日本と、アメリカは、違う国なんだなあと、改めて感じざるを得ませんね。 |
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2005/12/12 |
(追記2)
12月22日の毎日新聞が、
「ハッピー・ホリデーかメリークリスマスか」
「宗教色薄める傾向に、キリスト教右派反発」
「『多民族化』米で論争」
という見出しで、ニューヨークの高橋弘司記者と、カイロの高橋宗男記者、ジャカルタの岩崎日出雄記者が書いていました。ワシントンではハースタート下院議長が、ワシントンの連邦議会議事堂前に立つ「キャピタル・ホリデー・ツリー」を「キャピタル・クリスマス・ツリー」と改名するように命じた、と書いてありました。 |
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2005/12/23 |
(追記3)
12月24日クリスマス・イブの読売新聞に、
「米 変わるXマス」
というタイトルの記事が出ていました。リード部分には、
『「メリー・クリスマス」とは言わずに「ハッピー・ホリデー」に。25日は教会も休み』
という書き出しで、「脱宗教色」「家族重視」というアメリカ社会の様子が記されています。
記事によると、アメリカの調査機関が全米の州知事にとったアンケートによると、年末に贈るカードは、全米50州中37州の知事が宗教色の薄い時候の挨拶状を送り、伝統的なクリスマス・カードを送ったのは9人だけだったということです。そして挨拶状は送らなかった知事も4人いたとのこと。全部足すと・・・50州になりますね。
そんな中で、カリフォルニア州の、あのシュワルツェネッガー知事は、「メリー・クリスマス」とは記さずに自筆のクリスマス・ツリーの絵柄を添えたとか。一方で、伝統的なクリスマスをと主張する聖職者出身のハッカビー・アーカンソー州知事は「我々の救世主の誕生」という言葉とともに、クリスマスに4度言及したそうです。
また、ピュー研究所というところの世論調査では、アメリカ人の60%は「メリー・クリスマス」という伝統的な文言を好み、23%が宗教色を排した表現を好みましたが、45%は「どちらでも構わない」という意見とのこと。複数回答なんでしょう。また公共の場所での宗教的シンボルの展示・・・つまり街の広場にクリスマス・ツリーを飾るかどうかということだと思いますが、これに反対した人は35%(!)で、「クリスマスの商業化」に懸念を示した人は52%とのことです。12月21日付けのワシントンポストの特約記事でした。
ちなみに私は、この12月24日から香港に行ってきましたが、街の中の看板やポスターなどの表示は、ほとんど、
「メリー・クリスマス」
で、お店の人などからかけられる声も、「メリー・クリスマス」でした。ただ、一部アメリカ系のブランドのお店の看板などには、
「ハッピー・ホリデー」
と記してありました。でも、そのお店の人も「メリー・クリスマス」と言っていました。「ハッピー・ホリデー」と声をかけられたことは一度もありませんでした。
しかし、まさかそんなことをチェックされているとは思わないでしょうね。 |
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2005/12/29 |
(追記4)
大学時代のクラスメイトで、『英語屋さん』(集英社新書)というベストセラーも出している翻訳家の浦出善文君が、雑誌『財界』で連載しているコラム「英楽通法」の第109回(2006年1月17日号)で、
「Happy Holidays!楽しい祝祭日を」
と題して、「メリー・クリスマス」と「ハッピー・ホリデー(ズ)」をめぐる「ひと悶着」について書いています。ご興味のある方は、是非ご一読を! |
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2006/1/10 |
(追記5) 気がつけば、あれから1年。
今年はあんまり、こういった論争があるという話は、今のところ聞きませんねえ・・・。 |
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2006/12/7 |