◆ことばの話2219「なすりつけあい」
6月28日、4年前に兵庫県の明石市で起きた歩道橋事故の民事裁判の判決が出ました。
その模様を伝えた読売テレビの「ニューススクランブル」で記者は、明石市や警察側の態度について、
「罪を擦(なす)りつけあう」
という表現を使っていましたが、これについてI部長が、
「『擦(なす)り付け合う』というのは、クドくないか?『なすり合う』か『なすり付ける』でいいんじゃないのか?」
と疑問を提示。たしかに辞書には「なすりあい」と「なすりつける」しか載っていません。
「なすりつける」だと、一方の人だけがもう一人の人に「なする」行為をするのですが、「擦り合う」では二人がお互いに「なする」行為を行うというところに違いがありますね。
「なすりつける」と「なすり合う」の混用表現が「なすりつけ合う」だと思います。つまり、「なすり合う」に「つける」を付けることで、「なする」行為の"しつこさ"が強調されているようには思います。関西風の過剰表現なのでしょうか?
Google検索してみると(6月28日)、
「なすりあい」 |
=4570件 |
「なすり合い」 |
=6440件 |
「なすりあう」 |
=90件 |
「なすり合う」 |
=187件 |
「なすりつける」 |
=1万6300件 |
「なすりつけあう」 |
=273件 |
「なすりつけ合う」 |
=1290件 |
ということで、「なすりつける」が一番多いようです。
ではこれに、「罪を(の)」「責任を(の)」をくっつけると、
「罪のなすりあい」 |
=205件 |
「罪のなすりつけ合い」 |
=178件 |
「罪をなすりあう」 |
=11件 |
「罪をなすり合う」 |
=19件 |
「罪をなすりつける」 |
=674件 |
「罪をなすりつけあう」 |
=45件 |
「罪をなすりつけ合う」 |
=19件 |
「責任のなすりあい」 |
=914件 |
「責任をなすり合う」 |
=106件 |
「責任をなすりあう」 |
=42件 |
「責任をなすりつける」 |
=950件 |
「責任をなすりつけあう」 |
=103件 |
「責任をなすりつけ合う」 |
=557件 |
という具合で、ネット上ではどれもそんなに大きな差はありません。「なすりつけ合う」もそこそこありますね。
最近の言葉の使い方において「過剰な敬語」や「婉曲表現」がありますが、一つの出来事を表現するのに、過剰な重複表現を使うのも、もしかしたらその一端かもしれません。「なすりつけ合う」はその一例なのかも知れません。 |