◆ことばの話1150「けむいとけむたい」
今年の新入社員が、研修で半日アナウンス部に預けられました。テーマを決めて2分間でしゃべらせたり、ビデオを見ながら2分半、リポートをすることなどをやらせました。新入社員と言っても、技術職の人や制作部志望の人も含めて、一応テレビ局の社員として、いつリポートをしなければならない事態が起きるかもしれない、という想定での研修です。その中にはもちろん、アナウンサーのタマゴ小林杏奈も含まれています。VTRは4月2日に、再び大阪・法善寺横丁で起きた火災の様子を見て行ないます。その中で彼女は、
「すごい勢いで煙が噴き出て、けむたいです」
というようなことを言いました。それを聞いたほかの新人の中から質問が出ました。
「『けむたい』というのは、標準語なんでしょうか?」
なかなか、言葉に対する感覚は鋭いものを持った若者ですね。
私の説明はこうでした。
「うん、いいところに気づいたね。たとえば『重い』と『重たい』は『重たい』の方が重い感じがするだろ。でも、どちらも標準語だよね。だからこの『けむい』と『けむたい』も同じような関係かな。『重たい』とか『けむたい』の方がより、自分の実感が込もっていて良いかもしれないけど、ちょっと俗語っぽい感じがするね。そのあたりを考えて使えばいいんじゃないかな。」
納得してくれたようでした。
「重い」と「重たい」に関しては、「平成ことば事情932『重いと重たい』」をご参考に。
なお、余談ですが、さっき「しんにゅうしゃいん」とキーボードを打って変換したら、
「侵入社員」
になってしまいました・・・。確かに会社に「侵入」してくるんですよね、「新入」社員って。あ、「侵入」ではなく「進入」かな?
2003/4/28
◆ことばの話1149「国語学会が日本語学会に!」
3月某日、何気なくネットサーフィンしていたら、国語学会のホームページに行き当たって驚きました。そこには、学会の名称についての「会員投票の結果に関するご報告」というのが載っていたのです。
そう言えば、国語学会は、日本語学会に名称変更するかどうかについて検討中という記事を今年に入ってから新聞で見た気がしますが、その投票がついに行われたそうなのです。それによると、国語学会は学会名称問題に関する全会員の投票を実施し、2月23日に開票したところ、以下のような結果になったそうです。
投票総数1170票(うち有効投票数1150票) |
賛成 |
776票 |
反対 |
367票 |
白票 |
7票 |
無効票 |
20票
(返信用封筒に記名がないもの、締切日を過ぎて投函されたもの等) |
(有権者総数は2155名。投票率は54%) |
それで、賛成票が有効投票総数の1150の過半数に達したので、原案が可決されたのです。その原案とは、
『本学会の名称を創立60周年(2004年)を期して「国語学会」から「日本語学会」に改める」会則の文言も、それに応じて改める。』
つまり、「国語学会」は来年から「日本語学会」に名前が変わるのです!この結果は5月17日に大阪女子大学で行われる評議員会・総会で報告されて、正式な決定となるそうです。
そうかあ、でもそうなると、学校の「国語」の授業も何年後かに「日本語」っていうふうに名称が変わったりしないんだろうか。
反対票が賛成票の半分ぐらいしかなかったのは、ちょっと以外な気がしました。投票しなかった残りの46%の会員の方はどう思っていたのでしょうね。
2003/4/28
(追記)
「国語学会」のホームページを見てみると、「日本語学会」と名前が変わっていました。そして、2004年1月1日付で、日本語学会会長・前田富祺先生の「国語学会から日本語学会へ」というタイトルの挨拶文が載っていました。それによると、
「平成16年で国語学会は創立60周年となり、日本語学会へと名前を改めることになった。この問題については会員の間にも様々な意見があり、慎重に討議を重ねて、会員の投票の結果、改称が決まった」
とのこと。これは既にお伝えしたとおりですね。そして前田会長自身、「国語学と日本語学とが並存する大阪大学に奉職して、国語学と日本語学との間で迷ってきた」そうですが、そんな中、国語学会代表理事在任中に逝去された「徳川宗賢氏が早くから日本語学会への改称を主張していた」のに対して、「前田会長は、どちらかと言えば消極的な意見を述べることが多かった」と述べています。
また「大学の専攻名」は、1992年度には「国語学・国文学系」が66%を越えていたのに、10年後の2002年度には「日本語学・日本文学系」が72%を越えるに至ったことから考えると、「日本語学を学んだ学生が日本語学会という名に親しみを感じ、国語学会という名に違和感を感ずるのは自然な成り行きであろう。」とのこと。そして、「2003年には、日本に来た留学生の数が10万人を越えたという。外国人にとっては国語学会という名は親しみにくいものであろう。」とも 述べています。そしてそんな流れを考え、将来を見通して「徳川宗賢氏の後を受けた山口佳紀前国語学会代表理事が全体の意見をまとめ、日本語学会への改称を決めた」とのこと。最後に前田会長はこう、まとめていらっしゃいます。
「国語学会という名に愛着を感ずる人もいるだろう。しかし、日本語学、国語学と分れていては十分な力を発揮し得ない。 60と言えば人間では還暦の年である。学会も還暦を迎えて新しい気持で出発したい。両者を統合するならば日本語学会が良いという会員の判断を尊重し、従来積み上げてきた成果を継承しつつ、新しい名前で今後の発展を目指したいものである。なお、これに伴って、学会誌『国語学』の名前をどうするかということが現在検討されていることを付け加えておきたい。」
21世紀になって丸3年。こういったところでも新しい動きが見えてきているとも言えるのではないでしょうか。
2004/1/6
◆ことばの話1148「市民派」
4月27日投票の統一地方選挙。私の住む大阪府枚方市でも市長選挙と市議会議員選挙が行なわれました。選挙戦中は家の近くの何か所かに、立候補者のポスターを貼るベニヤ板の掲示板が設置されました。その巨大なこと!なんと56番まで番号が記されているのです。一体何人立候補するんだろう?と告示日を待っていたら、49人も立候補して、ベニヤ板は、ほぼいっぱいに!無駄に56番まで用意されていたわけではなかったのですね。でも、ここでまた疑問が。
「市議会議員って、定数は何人なんやろか?」
そんな事も知らなかったのです、私。反省。ちなみに枚方市の人口は、約40万人です。で、分かりました、市会議員の定数が。36人でした・・・・多すぎるんとちゃうか?半分でええ!・・・というと少なくなってしまいますが、20人ぐらいでいいんじゃないでしょうか。まあ、多くみても3分の2の、24人ぐらいで。36人ってのは多すぎます。みんな税金で雇っているわけでしょう?
同じようなことは、先日行われた大阪府議会議員でも感じました。枚方地区は府議会議員に7人が立候補していました。私はそのうち通るのは1人か2人かと思っていたら、なんと定員は5人だったのです。そして、大阪府全体での府議会議員の数は112人!多すぎでしょう、どう考えても。ねえ!
さて、それはさておき、今回の市議会銀選挙のポスターで目についたのは、ポスターに書かれた、
「市民派」
という文字です。「○○党公認」とか「○○党推薦」ではなく、ただ「市民派」という文字が、同じ自体のロゴで、何人かの候補者のポスターに記されていたのです。これは何か?統一会派のようなものなのか?と疑問に思っていましたら、4月25日の朝日新聞の大阪市内版で、その「市民派」を取り上げていました。それによると、選挙公報では、現職2人、新顔4人が「市民派」をアピールほかに現職1人、新顔2人が「無党派」を掲げていたということです。前々回、前回と「市民派」を掲げて当選した女性現職(50)は「納税者代表」であることを強調したそうで、「利益誘導型でなく、税金の公平適切な執行を」と訴えていたそうです。ただ、組織支援なしに新顔が選挙運動をするのは難しいので、この現職女性候補がほかの新顔候補にも呼びかけて、ほかの「市民派」とともに掲示場の選挙ポスターを貼る作業を4人で共同外注したとのこと。女性候補は「市民派はどの党とも垣根なく話せるので、党派と党派の接着剤的な役割も担うことが出来て、議会の活性化にもつながる」と話しているということです。
既成の政党にない特徴を持とうということですが、議会政治の中ではやはり会派を組むことの重要性もあるということが、この「市民派」というグループを、外から形作ったと言えるのではないでしょうか。
2003/4/27
(追記)
今朝の朝刊で、今回、市議会・町議会議員選挙があった大阪府内の各市町村の議員の定数が分かりましたので記しておきます。ついでに、その横に各市町の人口も手元の平成10年版『全国地名読みがな辞典・第六版』(清光社)の数字で(百の位を四捨五入して)記しておきます。議員一人当たりの人口がおおよそわかるでしょう。
|
議員定数 |
人口 |
枚方市 |
36人 |
(40.0万) |
門真市 |
28人 |
(14.1万) |
池田市 |
24人 |
(10.4万) |
守口市 |
30人 |
(15.7万) |
寝屋川市 |
32人 |
(25.4万) |
富田林市 |
22人 |
(12.2万) |
四条畷市 |
17人 |
( 5.4万) |
八尾市 |
34人 |
(27.7万) |
豊中市 |
36人 |
(39.9万) |
岸和田市 |
28人 |
(19.5万) |
吹田市 |
36人 |
(34.3万) |
貝塚市 |
22人 |
( 8.5万) |
堺市 |
52人 |
(80.3万) |
高槻市 |
36人 |
(36.2万) |
泉大津市 |
18人 |
( 6.9万) |
大阪狭山市 |
18人 |
( 5.8万) |
藤井寺市 |
18人 |
( 6.7万) |
高石市 |
17人 |
( 6.4万) |
岬町 |
16人 |
( 2.1万) |
田尻町 |
13人 |
( 0.7万) |
忠岡町 |
18人 |
( 1.7万) |
熊取町 |
18人 |
( 4.1万) |
ざっと見てみると、大きな市は、「人口1万人につき、議員一人」という感じでしょうか。それに比べ、小さな町などは、人口あたりの議員の数が大変多い。例えば田尻町などは人口が7000人弱なのに議員は13人。議員一人あたりの「受け持ち町民数」は約540人です。これに比べて、枚方、豊中、堺、高槻は、議員一人当たりの「市民受け持ち数」が1万人を超えています。その格差20倍以上。
こういう単純計算が必要かどうかは別にして、私の主張では「もっと(議員を)減らしてもよい」ということですから、例えば枚方の議員を24人にすると、議員一人当たりの「受け持ち市民数」は、約1万6700人となります。それを田尻町に当てはめると田尻町議会の議員数は0,5人でよくなってしまいますから、これでは「議会」が成立しませんね。もしかしたら、議員の最低数は法律で定めてあるのかもしれません。
議員の給料が、仮に年間2000万円位として、12人減れば、2億4000万円、税金の支出が減ります。全体から見れば微々たるものかも知れませんが、それよりも効率のよい「小さな政府」ならぬ「小さな議会」「小さな市政」を目指すのならば、「議員定数の大幅な削減」に即刻取り組むべきではないかと思います。各市長さん、議会とケンカするのは大変でしょうが、頑張ってください。
先日、和歌山の県議会議員が、4月1日以降に辞めると年金の額が減るという状態の中で、任期が満了する4月までではなく、年金の額が減る直前の3月31日付けで、4人も辞めたという記事が新聞に載っていましたが、(4月24日の日経新聞、4月25日朝日新聞)もし辞めた議員がそんな了見であるのならば、議員になるべきではなかったと思うのは、私だけではないはずです。
2003/4/28
◆ことばの話1147「リクナビ」
報道部のアルバイトの大学4年生の男の子と話しをしていると、彼の話の中に、こんな言葉が出てきました。
「リクナビ」
何だろか?「ナビ」は「ナビゲーション」の略として、「リク」はなんだろう?「陸」ぐらいしか思い浮かびません。でも「陸ナビ」ってなんだあ?と思って彼に聞いてみると、
「リクルートのナビゲーションのことだと思いますけど。」
という答えが返ってきました。
リクルートと言うのは、「リクルート事件」で有名になった就職情報誌を出しているあの会社ですよね。そこで(送ればせながら)ピーンときました。
「もしかして、それって、就職活動用のホームページか何か?」
と聞くと、
「そうですよ。」
「じゃあ、会社訪問の受付とか、面接の受付とかは、全部インターネットでやるの?」
「いや、全部とうこともないですけど、ほとんどそうですね。パソコンのインターネットとがなかったら、就活(シューカツ=就職活動のこと)、できませんよ」
とのこと。そうかぁ、ボクが就職活動をしていたのは、もう20年も前の話になるから、全然、今の学生さんには参考にならないのですね。基本的なところは変わっていないと思うのですが、それを取り巻くテクニックというか状況が、ずいぶんと様変わりしているのだなあということを、今更ながら実感したのでした。
しかし、インターネットは確かに便利ですが、そればかりに頼って良いのかなあ・・・と、ちょっとフアンになる今日このごろ。
2003/4/24
◆ことばの話1146「VS」
担当している番組「あさイチ!」の反省会でプロデューサーのK氏が、こんな発言をしました。
「今日の(字幕)スーパーで『○○ VS △△』って書いてたけど、あれダメだよ。『VS』は『ヴァーサス』という英語の『省略形』なんだから、『省略しました』って印として、ちゃんと「.」(ピリオド)を打って『VS.』ってしなきゃ。うち(読売テレビ)は、そう決めてるんだから、ちゃんとやろうよ。」
へえー、そうだったのか、知らなかったなあ。いや、もちろん「VS」が「ヴァーサス」(VERSUS)の省略であるのは知っていますし、「省略形はピリオドを打つ」のも知っていますが、「日本語表記」の中での「VS」の場合は、ピリオドを打たなくてもいいのかなあ、と思っていたのです。
そもそも、つい最近までは「VS」は、「ヴァーサス」なんてかっこよく読まずに、アルファベットをそのまま読んで「ブイエス」と言っていましたよね。
そのあたり、どうなのか、Google検索をしてみたのですが・・・これ、ダメでした。ピリオドがあるのとないので「VS」をキーワードに検索したのですが、「どちらも同じ物が出てくる」のです。(つまり、ピリオドがあるかないかは、Google検索では区別がつかない)
『日本国語大辞典』で引いてみたところ、VSにピリオドは付いていませんでした。
うーん、どうなんだろ。インターネットの掲示板「ことば会議室」にも質問を出したのですが・・・誰も書き込んでくれない・・・・。
どうなんでしょう、「VS」にピリオドがいるのかいらないのか、どなたか、ご存知の方、ご教示ください!そうでないと、この問題、ピリオドを打てない・・・。
2003/4/24
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