東京での生活に何か「違う」ものを感じ、湘南の海にあこがれつつも(価格が)高いのであきらめ、行き当たったのが千葉の房総。そこを拠点にダブルハウスの生活を始めた著者。建築デザイナーの本としてはそれほど目新しくないと思うところだが、この著者の家族には「ひと波乱」あったところがミソ。そういう意味では、その「波乱」がサンドイッチになっているところに、読み応えがある。
「特にデザインの領域を再定義しなければならないと強く感じていた。いわゆる可視化できる物体のデザインではなく、経験の総和のようなもの。」(190ページ)
「おそらく僕らの世代は土地や家に固執しない。所有という欲求や概念さえ少しずつ薄くなっている。それよりも過ごす時間を大切にする。誰と、どのような環境で、何を語り、何を食べるか。不可視の現象をいとおしく思う」(204ページ)
などと書かれている。著者は自分のことを「普通の人間で大衆」と言っているのだが・・・「大衆」じゃあ、ないよなあ・・・。
エッフェル塔に関する有名な言葉について、
「ロラン・バルトは『エッフェル塔』で「モーパッサンはしばしば塔のレストランで昼食をとった。とはいえ彼は塔を好きではなかった。『パリで塔が見えないのはこの場所だけだ』と彼は言ったものだ」(54ページ)
と紹介していた。へー、そうだったんだ。勉強になりました。
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