「なんとなくな」の「な」が詩的。癒やしの一冊。一つ一つ、3ページぐらいのほんとに短いなにげないエッセイなのだが、星新一のショートショート的な広がりを持つものもあるし、ほんとに何気なく、何も起こらない話もあるが、あとに、なにがしかの、ほっとする温かさが、手のぬくもりが残るような気がしました。とっても私小説的エッセイ。しかしこれが私小説、つまり「私生活」とすると、あの『センセイの鞄』も、フィクションではなくノンフィクションではないかと思ってしまうぐらい、通奏低音は同じ響きである。子供が二人もいて、夕食の買い物の途中にふらふらと立ち飲み屋に入って、焼き鳥二本と生ビールを飲むなんて、そんな人、普通はいません。十分、変わってます。
「ほっと」とか「ふらふら」という擬態語を、「カタカナ」ではなく「ひらがな」で書きたくなるんですね、川上弘美の世界では。 |
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