ヘッダー Space 『脳あるヒト心ある人』
(養老孟司・角田光代、扶桑社新書:2008、9、1)
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養老孟司と角田(かくた)光代が産経新聞上で交わした、往復書簡形式のエッセイ。交互に書いてあるが、それぞれの文章が見開き2ページと短いので、養老先生が書いてるのだと思って読んでいたら角田さんの文章だったりして、ちょっと混乱した。角田さんは、やはり女性の文章だと、途中で気付くのだが。
養老先生の文章で特に印象に残ったのは、
『私の誕生日の新聞の記事は、すべて中国での戦闘の記事で埋まっていた。火事も自殺も殺人も強盗もない。それを見て、私はやっと理解した。戦後に言われた「軍国主義」の真の姿とはこれだったのだ、ということを。別に積極的な主義が存在していたわけではない。ついには原爆が落ちる結果となった、あの戦争を準備した「主義」とは、日常的な事件を「新聞の記事にしない」ことだったのである。』(80ページ)
というところ。
また「記憶はうそをつく」という角田さんの話も、養老先生が以前、古館伊知郎さんと出した対談本のタイトルと同じで、「やはりな」と共感。でもそれだと、裁判の証人の言うことなど、信じられないということにならないか?心配。人間の記憶は不思議である…。

★★★★

(2008、11、30読了)
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