現役の首相時代にバイロイト音楽祭を聴きに行ったり、エルヴィス・プレスリーの故郷・メンフィスでプレスリーの曲を「振り」付きで歌ったり、オペラからX−JAPANまで、幅広い音楽好きで知られた小泉・元首相。
まだ現役の国会議員であることから「回顧録」を書くことは拒んだが、日経新聞文化部の編集委員が「音楽に関して語ってくれませんか」と依頼したところ、二つ返事で引き受けたというのがこの本。語り下ろし。
小泉さんは本当に音楽好きなんだなあというのが、よくわかる一冊。 小泉さんが音楽と出会ったきっかけは、12歳の時に先生の勧めで始めたヴァイオリンだという。しかし、ハイフェッツを聞いて自分の下手さ加減がわかり、以来「聴く方専門」になったとのこと。
よく、「男が一生に一度はやって見たい職業」として「プロ野球の監督とオーケストラの指揮者と総理大臣」などと言われるが、小泉さんは「オーケストラの指揮者と総理大臣はまったく別のもの」という。なぜならば「指揮者は楽団員と協力して一つの曲を作り上げようとするが、政界には野党もいるし、首相に反対する人はたくさんいる」からだという。なるほど。そのほか、私も好きなイタリアの作曲家、エンニオ・モリコーネに関して、小泉さんが最初に「いいな」と思ったのは、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の映画音楽だそうだ。
ちなみに私は『ニュー・シネマ・パラダイス』の曲だった。「モリコーネはイタリア・オペラにも通じる旋律の美しさに加え、哀愁に満ちた音楽を生み出している」と語っている。 「まだまだ聴いていない良い曲が、たくさんある」という小泉さんの音楽遍歴は、大好きだという「見果てぬ夢」を口ずさみながら、まだまだ続くことだろう。 |