没後25年以上が経ってもまだ人気の衰えない、それどころか昨今の「昭和30年代ブーム」に乗って、
さらに生き生きとした存在に思えてくるのが、向田邦子である。向田と言うと「古き良き東京」というイメージがあるが、著者の川本三郎もやはり「向田と『昭和の東京』」の結ぶつきを、強く感じていたのだろう。
本書では、冒頭キーワードとして、向田邦子の文章の中に出てくる「昭和の東京の言葉」をピックアップして解説している。
「しくじる」「お出掛け」「シャボン」「ご不浄」「たち」「寝押し」「出来が古い」
これがまた(東京生まれでも育ちでもない私にとっても)懐かしいのである。つまり「昭和」なんですな。
父親の転勤で日本全国を転々とした向田だが、「私は東京の山の手の育ち」という意識を強く持っていたらしい。沢村貞子に通じるもの、幸田文にも通じるところがあると思う。
時代はちょっと違うかもしれないが。
以前「綿あめ」と「綿菓子」の使い分けについての地方性について調べた時に、「綿あめ」使用者の代表格が沢村貞子と向田邦子であった。ちなみに「綿菓子」は林芙美子。
向田の「女嫌い」という視点は、なかなか興味深いものであった。
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