重松 清の名作とされる一冊。前から読みたいなと思っていたが、文庫本を見かけたので購入、読み出した。文庫本で500ページ近い分厚い本だけれども、結構一気に読めました。
38歳の主人公は、リストラされて再就職も思うに任せない、中学受験に敗れた息子が家庭内暴力を振るうようになり、妻は出会い系のようなもので知り合った男たちと情事を繰り返した末に家出、義絶状態だった父は、ふるさとで死の床についている、という、まあ踏んだりけったりの状態。「死んじゃおうかな・・・」と思っても仕方ないかなあ・・という設定からお話を始まる。その時、なぜか目の前にスーッとやって来て止まったワゴン車・オデッセイ。それに誘われるままに乗り込んで、行く先は「過去」=大切だったあの瞬間。自分の歴史を変えることが出来るのか・・・過去を変えることは出来ないが、いま頑張ることで未来を変えることが出来る。そんな勇気を与えてくれる一冊。父と子の、親子三代が錯綜する物語と言えるのではないか。身につまされる部分もあった。
あとがきで重松は、
「自分は『子ども』でもあり『父親』でもある。その両方の気持ちがわかる今、書いておきたい物語だ」
と述べている。なるほどね、と思いました。
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