ヘッダー Space 『移動遊園地』
(芳賀博子、編集工房・円:2003、5、20)
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著者は高校時代の友人の奥さん。元コピーライターだという。ご本人にはお会いしたことはないが。5年前に出した自費出版の川柳句集が贈られてきた。師は故・時実新子。なかなか新鮮な、川柳とコピーの合体したような味わいで、物語が句の中にあるものも多い。雰囲気は俵 万智。いわゆる「文学的」ではなく、現在をVividに取り入れている感じ。特に「擬音」に独自の感覚が反映されている感じがした。中原中也の「ゆあーん、ゆよーん」のような感じで。
「あんよの爪 つんでつんつん 紙の上」
では、かわいらしい赤ちゃんの姿が、白いかレースのカーテンごしに優しい日差しがさしこむ平日の午後のリビングルームが目に浮かぶし、
「いのちって 夜より深い 金魚蜂」
は、人生の深淵を覗き込んでいるような気分になる。
「ぽっかりと 火曜の市民プールにて」
は、他の人たちは皆忙しく働く平日に、市民プールの時間が止まったような中で感じる孤独とくつろぎが表現されているし。普通の言葉なのに背景が浮かび上がるところが、川柳や俳句の素晴らしさかなあ。「わび、さび」といった芸術性よりも、「生きている私」を表す、それが川柳ではないだろうか。あ、生意気書いてしまった。
気に入った句集に付箋を貼っていったら、ほぼ全ページについてしまった。「移動遊園地」というタイトルもノスタルジイを感じさせて、良い!


★★★★

(2008、1、18読了)

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