ヘッダー Space『モスラの精神史』
(小野健太郎、講談社現代新書:2007、
7、20 第1刷・2007、8、3第2刷)
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モスラというと、ゴジラに比べるとちょっとマイナーな感じがするし、特にモスラ・ファンでもないので、最初、本屋さんでパラパラ見た時はそれほど買う気はなかったのだが、その中に、
「恐竜や野獣ではなく、なぜ蛾の幼虫なのか?」
という問いを見つけ、その答えが、
「蛾が養蚕というかたちで文化的・社会的に生活に深く関与し、恐竜やゴリラと異なって、『日本』とのつながりが大きかったことを考慮しなくてはならない」
と書いてあるのを見て、「これはちょっとおもしろそうだ!」と思い購入した。
現代日本人が「海の道」、海上交通を忘れてしまったのと同じように、明治以降、ある時期まで日本の近代化を支えた1次産業と3次産業の橋渡しをした「養蚕」が、いつの間にか衰退している。その過程で登場したのが「蛾の幼虫・モスラ」だったのだというような主張は、非常に納得できるし、目新しかった。
話は変わるが「常用漢字」の中で「よく使われる漢字」と「使われない漢字」に関して、朝日新聞と読売新聞がそれぞれ調査したことがある。今年の春、そのデータを見たのだが、ほとんど使われない漢字の中に「繭」「蚕」があった。常用漢字の前身・「当用漢字」が制定された戦後間もない日本にとって、「繭」「蚕」と言った漢字は頻繁に使われたのであった。それだけ養蚕が身近だったからであろう。現在、養蚕が廃れた中で、その漢字も使われなくなる。これも時代の流れか。そんなことも、この本を読みながら考えたのだった。


★★★★

(2007、8、21読了)

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