著者はＴＢＳの報道局長。モスクワ支局長、ワシントン支局長などを歴任しただけに、一般の視聴者にも顔を知られていると思う。そういう意味では有名人である。本もたくさん書いてるし。1953年生まれ、1977年入社ということですが、もっと年上かと思っていましたが、意外と若い。
大きく分けて本書は3つの部分に分かれている。まず現代の戦争報道、２つ目は政治権力と報道、そしてマスメディアの現状と近未来について。戦争報道は、実はあまり興味がない・・・といっては何だが、「不肖宮嶋」みたいな取材をしようとは思わない。あれはあれですごいなあ、とは思うのだが、向き・不向きがあるでしょう。ただ、最前線に行くのとは別の意味でも、戦争報道というのはありうるわけで、そういう点では大いに興味がある。以前「空襲と空爆」の違い「侵攻と進攻」の違いといった視点について書いたことがあるが、情報操作なども含めて興味がある。
政治権力と報道に関しては、常に意識していないといけないので、これは大いに興味がある。アメリカで起きたことはすぐに日本でも起こりうるからだ。
そういった意味で、マスコミ関係者にとっては、必読の書であろう。
そして、あとがきに出てくる二人の女性の死。これにも驚いた。一人は、私も愛読していた作家の米原万理さん、そしてもう一人は著者が執筆していたＴＢＳ系の出版社が出す『新・調査報道』という専門雑誌の編集者・宮田　都さんである。実は一度だけ『新・調査報道』から執筆依頼されて原稿を書いたことがあるのだが、その時の編集者が宮田さんだったのだ。お会いしたこともなく、ただ電話でお話してメールのやり取りをしただけだが、亡くなられたということで、ショックを受けた。まだ５０歳だったという。謹んでご冥福をお祈りします。