ミース・ファン・デル・ローエは、建築関係の人にとっては「常識」とも言える、20世紀を代表する建築家だが、一般的にはフランク・ロイド・ライトほどには名前が知られていないと思う。私がミースの名を知ったのは、
「『神は細部に宿る』という格言がミースの言葉である」
ということをどこかで聞いたからである。しかしその後「実は、そうではない」という説もあるようだということも知った。そこで、本当に彼はそういう言葉を言ったのかどうか、それが知りたくてこの本を図書館で借りた。著者は、実際にミースの事務所で1962年から3年半働いたという。すごい!それなら身近でミースの言葉に接することができたに違いない!
しかしこの本の中には「神は細部に宿る」という言葉は出てこなかった。代わりにミースが常々口にしていたという言葉が載っていた。それは、
「建築とは、時代の要求を空間に翻訳することである」
「20世紀の形態システムは動力学的になる」
「生きている言語が正常に使われれば、それは次第に一つの文章を目指す。もしあなたがそれに優れていれば、素晴らしい文章を話すことが出来るだろうし、真に優れていれば、詩人になれるだろう。これらは、すべて同じ言語であり、生きている言語の特性は、これらのすべての可能性をもっているということである」
「科学技術は過去に根ざしている。それは現在を支配し、そして将来の方向を示唆している。それは歴史的な動きである。それは大いなるその時代を形成し、表現する動きである」
また、ミースの言葉としてよく引き合いに出されるという、
「LESS IS MORE」
という言葉はミース自身が一度も発したことがなく、インタビュアーがミースの言葉を受けて「それはLESS IS MOREですね」と勝手に解釈した言葉だと、著者(渡邊)は「あとがき」で記している。
家業の石工職を幼いときから助けて働き、レンガ職人として小さなレンガのブロックを積み上げて建物を作ることの重要性を、ミースは体で覚えていた。そして「積み上げる建築」にこだわった。そういう意味では確かにミースは「神は細部に宿る」と考えていたのではなかろうか。「小さなことからコツコツと」である。あれ?それって「西川きよし」さん?ミースは建築界の西川きよしか?いやいや、それはないでしょう。
それにしても「(ミース)ファン・デル(ローエ)」という名前は、サッカーオランダ代表の「ファンニステルロイ」を思い出させるなあ。
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