今年のお正月休みに読んだ本。故・米原万里さんの『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋)で紹介されていたうちの一冊だ。米原さんは丸谷さんの本をたくさん読んでいたようだ。
丸谷才一の小説は、私はたしか『女ざかり』ぐらいしか読んでいない(『裏声で歌へ君が代』は買ったけど読んでいない)。でも、丸谷才一の文章は「歴史的かなづかい」で書かれているものだと思っていた。しかしこの本は「現代仮名遣い」。なぜだろう?違和感があった。
小説の内容は、「すさまじき物は宮仕え」ということももちろん感じたが、赤紙が来たのに逃げ回っていた「徴兵忌避者」としての責めを一生負い続ける主人公と、やはり戦争の影を引きずっている世間。徴兵制がなくなった現在では、なかなか分らない感情だろうが、こういった「世間の目」は、今もなお存在する。
作品は、大学職員の現在と、徴兵を忌避していた過去とが交錯する。その間に、
「* * * *」
のような区切りがなくちょっと戸惑うが、それがこの作品の味わいでもある。現実と意識の世界の境目がない。そういう意味では(読んだことはないのだが)、ジェームズ・ジョイスの『フェネガンズ・ウェイク』を思い起こさせた。(読んだことがないのに!)
現在と過去の間に揺れてふと思い出す笹まくら・・・・。「笹まくら」というタイトルの意味は、読むとちゃんと出て来る。意外と「男女の世界」も楽しめる。 |
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