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『悲しき戦記』
(伊藤桂一、光人社名作戦記004:
2003、1、14)
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おととし、所属している合唱団で歌った曲が、伊藤桂一作詞・高田三郎作曲の『戦旅(せんりょ)』であった。文語と口語か混じった組曲は、歌詞に統一性がなく、暗い曲だった。以前、一度東京大学コールアカデミーの演奏をレコードで聴いたが、ただひたすらに暗かった。しかし実際に歌ってみると、まるで自分が60年前の戦場にいるような気持ちになったから不思議である。
おっと、合唱曲の話をするのではなかった。その曲の作詞者・伊藤桂一(・・・と言うより、伊藤桂一の文章に高田三郎が曲をつけたのだが)の作品である、この『悲しき戦記』を読むことで、より『戦旅』の世界が分かるのではないかと思って読み始めた。しかし一冊読み終わらないうちに、その合唱曲を披露する演奏会が終わってしまい、ちょっと読む気をなくしていたのだが、戦後60年、ここに来て頑張って読んだ。しかしやはり内容は重く、集中して読まないと、ついていけない。そんな重い話が27話もあるのである。
あとがきによると、これは『週刊新潮』誌上に、昭和37年9月17日号から翌年11月25日号にかけて連載されたものだとか。今から43年も前のことである。つまり、その連載当時は、まだ終戦から17、8年しか経っていなかったのである。連載から後に流れた時間の方が、圧倒的に長い。戦争の記憶が風化するのも、むべなるかな、である。
これを読んでなお、「平和は尊いが、戦争をしなくちゃならない時もあるんだ」と言える人がいたら、顔を見てみたい。

★★★
2005、11、16読了
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