昭和30年に書かれたこの小説、素人の主人公が、芸者の家のお手伝いさんとして入り込み、その内幕を描く、と言った感じか。
旧仮名遣いの小説は、なんだか興味深い。なんで女中にならなければならなかったのか、その当たりがわからないのだが、時々チラチラと、それをうかがわせるようなことも出てくるが、結局よくわからなかった。
文体に、いろいろとおもしろいなと思わせるものが有り、たとえば「一トき」「二タ通り」「一ト足の近ま」といったカタカナの使い方だとか、擬態語がおもしろくて、「一ト眼げぢげち草履をみるなり、はヽあと呑みこんだ眼まぜをする」の「げぢげぢ」だとか、「借金の催促にへぐへぐさせられて」「借金と老いらくの恋でへぐへぐになつてゐる染香と」の「へぐへぐ」などの表現に目を引かれた。川上弘美は、この系統なのだなと思った。
このほか、気づいた点については「平成ことば事情」に書きます。 |
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