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『今生(こんじょう)のいまが倖せ・・・
母、鈴木真砂女』
(本山可久子、講談社:2005、2、25)
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今年4月24日の日経新聞書評欄の著者インタビューを見て、その後、作家の出久根達郎さんもほめていたので購入。夏休みを期に、ようやく読んだ。
鈴木真砂女さんという歌人の名前は聞いたことはあったがよくは知らないし、女優でこの本の著者・本山可久子さんのことも知らなかった。
文章自体は、決して上手とは思わない。時系列がポンポン飛ぶのでわかりにくい部分がある。しかしそれを補って余りある、真砂女の激しい生き方・情念のようなものが感じられる。映画の「ジョーズ」を見に行った時、画面いっぱいに広がる鮫の姿を見たときに母がチョイチョイと私をつついて「『ネ、終わったら中華食べて行かない?』彼女はジョーズを見てふかひれスープを連想していたのだ。」という部分は、とっても可笑しかった。
全体から感じたのは、著者は実はそういった母のことを、娘の著者は許していなかったのではないか。亡くなって2年が経ち、ようやく母を許し、理解したのではないか。そんな気がした。
一点、94ページの近藤啓太郎さんを紹介した部分で、彼が読売文学賞を受賞したその作品「奥村土牛」に「おくむら・どぎゅう」とルビがふってあったが、この日本画家の名前は「とぎゅう」と濁らない、と思う。

★★★
2005、8、31読了
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