ヘッダー Space『住所と地名の大研究』
(今尾恵介、新潮選書:2004、3、20)
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平成の大合併が粛々と進み、ニュース原稿の中に見慣れない地名が出てくることが多くなった。本当にこんなふうに、合併によって古くからの地名が消えていってしまっていいのか?という疑問を抱きつつ読んだ。
話は横道にそれるが、本を購入するときに私がまず見るのは「奥付」である。ここでまず、発行日を見る。古い本なのか新刊なのかを確認するのである。少し古い本だと、既に購入していてカバーをつけたまま書棚の隅に眠っている恐れがあるからだ。新しい本だと、「あ、まだ買ってないな」ということになる。その次には目次を読む。本全体の内容を知るためである。このときにひっかかる項目があれば、そのページを開いて立ち読みする。そして気に入れば買うのである。
今回は目次を読んでいて、
「町・・・チョウかマチか」
という項目に目が留まり、購入した。さっそくその項目を読んでみると、自治体の大まかな傾向では、北海道を除く東日本は「マチ」、西日本は「チョウ」、九州は混在という傾向があることが記されている。この分布は、マクドナルドの省略形「マック」と「マクド」の分布と似ているのではないか、というのが著者の見立て。これはおもしろい見方である。そしてこの「マチ」を音読するか訓読するかは法的・制度的にはなんら基準は定められず、もっぱら地元の慣用にゆだねられているのだということも記されていた。
市町村内の「町」をどう読むかに関しては、たとえば仙台や和歌山などは本来、武家屋敷は「丁(チョウ)」、町人が住むところは「町(マチ)」と区別していたが、仙台では最近は「丁」であったところも「町」にしてしまったとか。地名は、合併などでもし変更することになっても、その由来・歴史などもしっかりと勉強した上で、変更後の名前を考えないといけないのではないか、と思った。
そしてこの項目の最後に、著者はこう記している。
「権威あるとされる地名辞典にも、どちらか決めかねている場合がある。たとえば『角川日本地名大辞典』の凡例には<町(まち・ちょう)、山(さん・やま)などの読みについてゆれのある場合は、一律に音読の「ちょう」「さん」に統一した。>という記載がある。だから地名辞典といえども、これが絶対に正しいなどと信じ込んではいけない。チョウとマチの問題は、それほど簡単に結論が出るような話ではないのである。」
ハアー・・・やっぱりね。
なお最終章では、著者が実際に体験した自分の住む町の名称変更と、それを阻止しようと運動した著者の活動が記録されていて、これも興味深い。

★★★★
2005、6、25読了
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