実はこの本の著者・内藤陽介氏の「切手」に関する著書(『解説・戦後記念切手III 切手バブルの時代〜五輪切手・新幹線切手に踊らされた頃1961−1966』内藤陽介、日本郵趣出版:2005、4、1)を読んで、感想をこの欄に書いた(2005読書日記067)。その読書日記を、著者の内藤さんが読んでくれたらしく、6月下旬のある日、お手紙を添えてこの本が贈られてきたのだ。ビックリした。たぶん、ご自分の名前や著書名をキーワードにしてGoogleかなんかで検索して出てきたと思うのだが、まったく面識もないので、本当に驚いた。そういう時代なのだな。気をつけて書かなくては、関係者に不快感を与えてはいけない。でも、結構好き勝手に書いてるのがこのコーナーの特徴なので、そこにあまり制約が加わっても・・・とも思うし。表現することは、難しいのだなと改めて感じた。
さてこの本だが、「切手」の持つ「メディア」の役割に注目し、政府のプロパガンダとして使われた切手を取り上げている。それもプロパガンダの相手(敵)は、アメリカ。「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」の世紀・20世紀後半は、言ってみれば「反米」の世紀とも言える。アメリカが次々と敵対する国々を飲み込んで行った歴史とも言えるわけだ。その二つ(切手というメディア、反米)に着目した点が、既にして素晴らしい。
内容はやや専門的・・・と言うか、完全に専門的でよくぞここまで世界史と切手の歴史に通暁したなと感心するしかないほどだが、それほど詳しくない私などにとっては、難しく感じるところもあった。世界史とは複雑である。
本の体裁に関して言えば、願わくは、「もう少し切手の写真が大きければ・・・」と。
それにしても「反米」は「アンチ・ジャイアンツ」に通じるのではないか。つまり本当のところは「ジャイアンツ・ファン」「アメリカ・ファン」に通じる部分もあるのではないかと感じた。242ページに出ている、イランが出した「アメリカ大使館占拠8周年記念切手」のデザインなんか、「反米」再燃の印と内藤氏は書いているが、図案だけ見ると「星条旗にホワイトハウス(?)」で(アラビア文字の内容がわからない我々から見たら)、どう見ても親米派の切手ではないか、と思わせる。
また、切手で「反米」を教育し宣伝するのは、中国や韓国が教科書で「反日」を教えるのと同じではないか。そういう意味では、切手も教科書も等しく「メディア」であり、「教育の手段」である。
翻ってわが国の最新の記念切手(6月20日発売)は、アニメシリーズで、図案は、
「ポケモン」
である。これでいいのか。売れればそれでいいのか、記念切手とはそういうものか?民営化したらこの傾向はもっと強まるのではないか。
一度そういった点について、内藤氏に伺ってみたいと思う。
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