ヘッダー Space
『半島を出よ(下)』
(村上龍、幻冬社:2005、3、25)
トップページ
過去掲載分
ヘッダー

Space
「(高麗を)コリョと短く略すと間抜けな感じがして」(10ページ)という記述は、明らかに「チョン」と同じであろう。近未来小説として、短い音に略すとちょっとマヌケな感じになること、しかもそれが拗音であれば、なおさら・・・という日本人の感覚を、「チョン」以外の言葉で表現して「挑発」しているように感じる。
それと、村上龍のマスコミ観はかなり批判的。特に民放テレビ局に対するものは、それが強く感じられる。たとえば、「NHK福岡局」の場合は「女性アナウンサー」(下巻11、12ページ)同じく下巻129ページから130ページで出てくるNHKの細田佐起子というアナウンサーも「女性アナウンサー」と書いている。ところが、上巻の219ページから229ページにかけて出てくる「テレ朝系」の女性アナウンサーのことは「女子アナ」としているのだ。
もっとも、下巻101ページには「TBSの女性アナウンサー」と出てくるので、一概に民放を批判しているということでもないとは思うのだが。それにしても、朝日系に対する批判の目はきついように感じた。まあ、そういう物語だからね。
(追記)
昨日(6月8日)のタイ・バンコクでのワールドカップ・アジア最終予選、対北朝鮮戦に、村上龍が読売新聞の特派員として派遣されて、今朝の朝刊(6月9日)観戦記を書いています。
それによると、村上龍の周りの席に、金日成バッジをつけVIPというIDパスをつけた北朝鮮の人たちが座ったそうです。
「ここは北朝鮮のベンチ裏だった。まさか、北朝鮮の反乱コマンドが博多を占領する『半島を出よ』という近未来小説を書いた作家だと彼らにわかるはずもないが、なんとなく緊張する。」
という状態だったそうです。事実は小説より奇なり。村上さんも、まさかこんなことになるとは思っていなかったでしょう。

★★★
2005、5、29読了
Space

Copyright (C) YOMIURI TELECASTING CORPORATION. All rights reserved