元・日本テレビアナウンサー・記者の藪本雅子さん。2度目の結婚をして日本テレビを退社して早4年、いまや2児の母。なんで今頃こんな本を出したのだろうか?という疑問は消えないが、とにかく読んでみた。
250ページのうち75ページは、子供の頃、アイドルとして売り出したが失敗したこと、ぐれたこと、アナウンサー時代のこと、荒れたこと、記者として頑張ったことが書かれているが、なんだか、杉田かおるを思い出してしまった・・・。
そして実はこの本を書いた本当の動機は、そのあと最後まで紙面を費やしている「ハンセン病の取材を通じて学んだこと」だと思われる。それならば、どうでもいい女子アナ時代のことや、自分の子供の時のことは省いてしまって、しっかりとそれを書いた方がいい。それにタイトルも『女子アナ失格』などという、いわゆる「女子アナ本」に思われるようなものではなく、はっきりと「ハンセン病と私」とか「ハンセン病を取材して」とかいうふうに硬派で通した方がよかったのではないか。最初に出版の話があって、出版社側から「売れるタイトルにしないといけないから」とか「女子アナ時代のエピソードをもっと書いてください」と言われたかどうかは判らないが、そうでもなければ、タイトルと内容のアンバランスの理由がわからないのである。
ちなみに、新潮社のPR誌『波』6月号に「ひたむきな挑戦の数々」と題して、国際福祉大学総長で高松宮記念ハンセン病資料館館長の大谷藤郎氏が書評を寄せているが、やはり前半部分と後半部分のあまりの乖離について触れて、前半部分の華やかな著者と、後半の暗く重い現実に立ち向かった著者のどちらがほんものの薮本雅子であるか戸惑うかもしれないが、「どちらも同じ」であって、「彼女は分裂などしていない」と大谷氏は書いている。日本の社会こそが「二面性に分裂しているのだ」そうだ。まあたしかに日本の社会は分裂しているが、彼女が分裂していないかどうかは、また別問題だと思った。 |
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2005、5、28読了 |
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