日経新聞の「私の履歴書」をまとめて2002年2月に単行本が出たものの文庫化。私の世代だと、稲尾投手の現役時代は知らないので、興味深く読んだ。このところ球界再編が問題になっているので、その歴史を知る上でも西鉄ライオンズの伝説の投手・稲尾投手が自ら記したこの本はおもしろく、グイグイ引っ張られるようにして読んだ。
巻末の「稲尾和久の軌跡」や「稲尾和久全成績」も丹念に読んだ。昭和31年から引退する44年まで、実働14年で通算276勝。31年からの勝ち星は、21、35、33、30、20、42、25、28。信じられないような数字が並ぶ。そして9年目は故障で0勝に終わり、その後は13勝、11、8、9、1。この故障してからの6年についてもう少し詳しく知りたかったような気はする。
まさに世は高度経済成長の時代。稲尾の成績が落ちてきた時は巨人のV9が始まった年でもある。西鉄から巨人へ。そして、時代は流れていく。野球というものと、戦後高度経済成長化の昭和という時代を考えてしまう一冊でもあった。 |
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