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『阪神淡路大震災10年』
(柳田邦男編、岩波新書:
2004、12、21)
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2005年1月17日、阪神淡路大震災から丸10年の歳月が流れた。10年前に地震が起きたその時刻、午前5時46分、私は中継のために神戸市役所横の東遊園地という公園にいた。
この10年で最も多い5000人の人たちが、尊い犠牲となった人々の冥福を祈り、黙祷を捧げた。静かに黙祷の波が、公園に広がった。沈黙は、波のように広がるのだ。
さて、この本は中継を翌日に控えた1月16日と、1月17日当日の中継の合間の待ち時間に読んだ。サブタイトルは「新しい市民社会のために」で、執筆者は、松本誠・市民まちづくり研究所所長、山口一史・特定非営利活動法人ひょうご・まち・くらし研究所常務理事、大谷成章・NPOひょうごの具洋クラブ専務理事の3人。いずれも元・神戸新聞記者である。
自分たちの街・神戸が壊滅的被害を受けた阪神大震災から10年。その歩みと今後の問題点を、それぞれの視点から指摘している。
まえがきと第1章は編者の柳田が、新潟県中越地震の情報なども入れてそれとの対比の中で阪神大震災にも触れている。特になるほどと思ったのは、新潟県中越地震では高齢者の犠牲者が多く、しかもがけ崩れや家屋倒壊による圧死よりも「ショック死」が2倍も多いという点である。
第2章、冒頭で松本は、「表向きのきらびやかな装いに反して、まちはのっぺりとした無機質なまち並みに変わり、産業と人びとの暮らしの復興は”まだら模様”である。」と記している。この「まだら模様の復興」という言葉は、今年の1月17日の朝、読売テレビ解説委員の辛坊治郎も、「ズームイン!!SUPER」の淡路島からの中継の中で使った言葉である。
また、2005年10月には、阪神淡路大震災復興基金を財源にしてきた高齢者世帯生活援助員や、いきいき県住推進員などの「見守り事業」の多くは「打ち切り」となるという問題を指摘。そして、これからは地震は防げなくても地震による被害を最小限にするという「減災」「事前防災」は可能で重要。「減災」で最も大事なことは「家は壊れても人は死なない」というふうに家屋や公共施設を耐震構造にすることであると訴える。
第3章では、新しい住まい方の提案もしている。
「あとがき」で、編者である柳田はこうまとめている。
「十年という歳月の流れがなんと早かったことかと思う。被災者たちにとっては、生活や住まいの再建に精一杯の日々の連続だったろう。あっという間の十年だったと感じる人びとも少なくないと思う。」
同感である。この10年を考えることで、これからの10年を考えなければならないと思う。

★★★
(2005、1、17読了)
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