『報道は何を学んだのか〜松本サリン事件以後のメディアと世論』(河野義行・磯貝陽悟・下村健一・森達也・林直哉、岩波ブックレット:2004、10、5)
この本、非常に薄いんです。ブックレットだから。70ページしかないんです。それで、480円+税です。せめて半額にして欲しい。
しかも読み出したら、なんだか、どこかの新聞で読んだような気がしてきた。
出席者は、松本サリン事件の被害者河野義行さん、この読書日記でも取り上げた『下山事件』を書いた森達也さんや、やはりこの読書日記で取り上げた松本美須々ケ丘高校教師で松本サリン事件を通じて、メディアリテラシーの重要性を学んだ林直哉さん、マスメディア側から元TBSの下村健一さんと、テレビ朝日出身の磯貝陽悟さん。
毎日新聞に載ってなかったかな、このメンバーの座談会ってのは。ちょっとガッカリ。
でも後半に、それぞれの出席者から一言というところがあって、そこはいろいろとフーンと思うところがあった。
特に河野さんが、2004年2月27日の松本智津夫被告に対して「死刑」の一審判決が出た時に、テレビ各社の記者が我れ先にと全力疾走してマイクに飛びついて「死刑判決が出ました!」と叫んでいたことの無意味さと、速報性を重視するあまりに大切なものを失っているのではないかと指摘している点について、当時私もまったく同じ感想を持ったので、深くうなずいたのだった。あのマイクに飛びつくさまは、「イントロ当てクイズ」をしているようであった。
もし、「無罪判決」が出たのであれば、もしくは「無期懲役」判決が出たとすれば・・・つまり「死刑判決」以外の判決が出たのであれば、これは全力疾走しても、それほどおかしくないと思う。でも誰がどう考えても100%死刑判決が出ることはわかりきっているのである。で、予想通り「死刑判決」がそれならば、一刻一秒を争うことは、滑稽でしかない。何のための一秒を争っているのか。他社との「面子」争いに過ぎないのである。
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