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『<私>の愛国心』
(香山リカ、ちくま新書:2004、8、10)
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精神科医で、タカラの「リカちゃん人形」の名前をペンネームにしているこの人の本は何冊か読んだことがあるが、何か納得できないところが多い。それでもなぜか買ってしまうのは、どこかに魅かれるところがあるからなのか。
今回は、これまでに読んだことがある彼女の著作に比べると、かなり読み応えがあった。タイトルの<私>は、「私=香山リカ」ではなく、「公私」の「私」、つまり他人のことを一切省みずに自分の殻の中で世界が完結するという意味での「私」である。それに気づいて、この本を買った。もしタイトルが< >のない『私の愛国心』ならば、買わなかったし読まなかっただろう。香山リカ本人の愛国心に、興味はない。
一番興味深かったのは、第二章の「自分以外はみんな<バカ>」である。社会の中での他者との共存を考えれば、こういった考え方はできないはずなのに、白状すれば私などもついつい、こういった心情に陥ることがある。それも最近は、しばしば・・・。いけない、いけないとは思いつつ、怒っている自分がそこにいる。
それは不安に基づくもので、現在の世界情勢を見つめると、「アメリカ」という国は、ネオコン(ご存知ですよね)と呼ばれる人たちを中心に、「自分以外はみんな<バカ>」と考える「境界例(ボーダーラインパーソナル)」という病理に冒されていると、香山は言う。そして「日本」も、感染していると。その”病気”を治すにはどうすればよいのか?というと、「リミットセッティング」が必要である、と。「リミットセッティング」とは、なんじゃらほい、と思って読み進むと、「相手と良い頼関係を築くこと」だと。おいおい、ここまで引っ張っておいて、これかよ・・・。
なんだか結論は「当たり前」で、あまりおもしろくはない。尻すぼみ・・・。自分を見つめる第三者を自分の中に持つことが必要だと、私は考えるのだが。いずれにせよ、「国」に人間個人の精神病理判断を持っていくこと事態、ちょっと無理があるか。

★★★
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